干渉フィルター越しの薔薇

三題噺:「赤く咲く」「手酌」「夜の色」



「宇宙って思ったよりも色が多いよね」


君はいつもの日本酒を手酌しながら楽しそうに笑う。


「赤く咲くのは、ばら星雲」


うっとりするかのように上を見上げて、君。

宇宙に浮かぶ深紅の薔薇。


「夜の色は黒とか紺とか、そんなイメージだろ? でもさ、天の川だって黒じゃないから見えるわけで」


でも、ばら星雲は肉眼では見えないじゃない。

私の指摘に、ふふっと君は笑って。


「君のそういうとこ、嫌いだなぁ」


だから私も笑って言う。

あなたの目にも干渉フィルターをつけてもらいたいわ。ばら星雲を見るときの様にね。

そうしたら、私のことも綺麗に見えるわよ。


「必要ないね。君は肉眼でも見える。綺麗にね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る