黒い太陽が昇る国
山脇正太郎
第1話
もう三年ばかり、この国では、夜が続いている。いや、これは正確に事態を表してはいない。正確に書くとすれば、夜と闇の時間が交互に続いているとしたほうが適当だろう。夜は明ける。それは以前と同じだ。そして、太陽も昇る。それも同じだ。ただその太陽は暗く、黒い光を放っている。人々は、その太陽を黒陽と呼んだ。
黒陽は、その国に住む人々の生活を一変させた。森の木々は枯れ始めた。畑の作物にも同じことが起こり、その収穫量は激減した。収穫量の減少は、人々の飢えに直結する。食糧の強奪が起こった。盗みは、生活の手段となった。そうしなければ生きていけない。人々は信じ合うことをしなくなった。黒陽は人々の心にも影を落としたのであった。
黒陽は、魔術師の仕業と誰もが考えていた。三年前にどこからか魔術師が町にやってきた。髪と髭は白く、長く伸びていた。薄汚れたローブをまとい、その顔からは疲れていることが見て取れた。人々はその男に優しかった。食べ物を与え、住む場所を与えた。男は、その礼として不思議な力を使った。作物の収穫量が飛躍的に増えた。人々は、彼の力に驚愕し、喜んだ。あくせく働かなくても済むようになった。人々は歌い、踊った。
このことはすぐに国王の知るところとなった。魔術師の男は、城に呼ばれた。不思議な力を国民全体に使ってもらうためだという。人々は、男の出世を喜んだ。国が豊かになる。人々は、そう思ったのだ。しかし、その期待はすぐに失望へと変わった。魔術師は心変わりをした。国王をたぶらかし、代わりに政治を執り行うようになった。そして、黒い太陽が昇るようになった。魔術師の魔力によるものだと人々は噂をした。そして、魔術師を討つべきだと考えた。腕に覚えがある大勢の若者が、城に向かった。しかし、誰も帰ってこなかった。
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