第38話 傀儡工房の本気

 かつてカブリア王国と呼ばれていたその領域を流れる、テイム川の岸辺でも、一夜が明けていた。


 おぞましい瘴気をはなつ死霊傀儡工房の村で、職人達はその目に闘志をみなぎらせている。


 職人達がいま、蔵の奥から出してきたのは、漆黒の壺に入れられた、傀儡魂ギミック・スフィラの原型だった。職人たちが『原液』と呼ぶもの。

 赤く発光する液体だった。

 

「まさかこれを使う時がやってくるとはな」


 職人セラフィムの一人が緊張の面持ちで唇をなめた。

 他のセラフィムがうなずく。


「天界から時空を超えて持ってきた、貴重な上物ジョウモンだ。作るのに三年もかかる、逸品モンよ。これを使って……」


「ああ、絶対に殺してやる。エスペルとライラ、待っていろ!」

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