第43話

ああ風が気持ちいい。


本日の午後は日向ぼっこだ。


その前のことも教えろって?おいおいこの作品は一応有害図書法の対象外だぜ。それによ童貞捨てたばっかしのおっさんがカッコつけられるかっての。動くのだけで精一杯だぜ。それはさておき今を楽しもう。


草原のカーペット、初夏を迎えた少し暑い日差しとそれを冷やしてくれる草の香りを纏った心地良い風。これ以上の贅沢は存在しないと俺は思う。


みんな俺が暇してるって思うだろう。でもその暇が最大の贅沢に他ならない。


ムギュウ


む、暑苦しい何かが俺を抱きしめている。暑い離れろよ。


もみもみ


アレなんかヤワラカイヨ


「んん~ん。」


イロッポイコエガスル


オレハナニモ聞いてないよし、暑いけどそのまま寝るか。


(もうお仕事終わったの?)


うん、この感じはラピスか。なんでテレパシーできてるんだろう。運命?


(うん、終わった。)


(じゃあ一緒に寝ても大丈夫?)


(もち、大丈夫。)


(というかなんで心の声聞こえてるの?)


今更感が半端ないこのセリフ、そろそろ聞いておかないといけない気がしたので聞いてみた。


(わたしのスキル。)


あ、なるへそ。そういえばこの世界スキルなんて便利なものが存在したんですわ。趣味がラノベ漁りと公言しながら忘れる子の所業、異世界にラノベが無いのが悪いってことのしよう。(ダメな人間の典型的な例ですので反面教師にしてくださいね。byアルティマ)


互いにそよ風に吹かれながら偶にもみ合い、土の香りを感じ寝ること1時間何者かが俺らを起こしに来た。


「二人ともそろそろ起きてください。」


この声はミーシェルのものだな。


「三日後に行われる叙爵後の襲名パーティーのドレスやタキシードの仕立てがありますよ。」


Oh 確か三日前の叙爵式はお義父さんの御下がりを着てさっさと爵位貰ったんだっけ。


「特にアレン、貴方は自分用の者が一着も無いんですからこれを機に何着か見繕ってもらいますよ。」


やばいな、時間は刻一刻と迫ってきているというのにこの気持ちいい芝生が俺を話してくれないぜ。ほらラピスも同じこと考えているぜ。


「アレン、起きているのはわかっています。さっさと出てきてください。」


痺れを切らしたのか物理的に起こしてきそうだったので一先ずラピスに意見を求めることにする。


(ねえ、めんどくさいから逃げない?)


(ん、了解。)


ラピス共に俺は逃げるべく魔力を発動させる。


「【イグニッション】」


本来のイグニッションは小さな種火を起こすための魔術だが宮廷魔術師の方に聞いてみると俺のは個体潜在能力 無限なる有限によって因果を歪めてしまうほど強力になっているらしい。俺はイグニッション、即ち点火というきっかけの観点から行う燃料の点火をイメージして行うため生命の分裂という燃料をよりよくするイメージで植物の雄蕊に点火させることで花粉が大量に舞い煙幕のようになった。


「ちょ、これは煙幕……なら【この世 我らの住処 与えし偉大なる大地よ 我ら 見えぬ異形を 捕縛しろ サーチアースバインド】」


詠唱から見て探知と捕縛を兼ね備えた魔術でそんなことは織り込み済みなんだよ。


「【【イグニッション】】」


基本週刊誌はジャンプ派だがマガジンもサンデーもチャンピオンも大好きだ。

何がも言いたいかって?

スキル『趣味』の記述欄にはこう書いてある。


〔〔趣味〕〕

趣味にしていることが必要以上に上手くなりやすい。苦労を楽しむ趣味は対象外。


どういう意味かって、そんなもん漫画でやってたことの0パーセントできない可能性がほんの数パーセント可能にするってことだよ!!亀は〇波練習した回数はいざ知らず、照明の紐でシャドウを行うこと数万回。そんな奴がこのスキル持ったら最高過ぎるだろうが。


つまり今の詠唱は肺と声帯を二つに分けるサンデー発の荒技で行ってことだよ。


ひとつのイグニッションは爆発による推進力を得るために作った。そしてもう一つは水分という水分を集まらせるイグニッション水をクッションとして俺たちは跳ね上がりあっという間に逃げ出した。


「ぐぬぬぬ、普段の仕事はきちんとこなしてくれるのにパーティーとなると逃げるのはなんででしょうね。でもまあラピスさんもいるみたいですしそこまで危ないところに行かないでしょうから。帰って生きてから仕立ててもらいましょう。仕立て人には申し訳ないですがね。」


「いえいえ構いませんよ。王子の採寸はアーグル様と大して変わりませんし、大まかな型を作って気に居られたのを何着か仕立て直す形の方が王子にもいいでしょう。あの方は拘束されるのが苦手なお方です。気長にやっていた方が人生お得ですよ。」


「え?」


ミーシェルは振り向くと呼んでいた仕立て屋こちらまで来ていたことに驚いたのだ。なんせ足音一つまるで足がないかのように一切聞こえなかったのだから。


「王家御用達は伊達ではありません。これでも別のことでも王家を支えてきたのですからこのくらいできますよ。」


この男の素性は王家しか知らない。

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