第164話 SS 勇者様が求める①

-§勇者視点§-

「勇者ギーゼルヘーア・フォン・ヘンゲン、戦士レミジオ、魔術師アスセナ ・ アラーニャ、スカウトライアンこれより試練の旅に出立いたします」

「うむ、活躍と更なる成長に期待する」

勇者たる我の活躍は約束されたようなものだというのに父上の言葉はまるで我が力が不足しているかのようではないか。

「勇者様、とりあえずの目的地は聖国の聖都だと聞いておりますが間違いありませんか」

アスセナがその綺麗な顔を綻ばせながら聞いてきた。

「うむ、まずは聖都。それが勇者の旅のしきたりだそうだからな」

「しきたりですか」

「うむ、なんでも聖都で神託を得て後に旅に出るのだそうだ」

「はあ、またそれは面倒ですね」

我がヘンゲン子爵領から聖都まで馬車でも30日近く掛かる。しかも我が勇者として移動する以上それなりの対応を求められることが予想される。その面倒くささに我自身ため息が漏れる。


「恐れながら勇者様御一行様とお見受けいたします。私この街の長をさせていただいておりますデーブと申します」

そういうと街長は深々と首を垂れた。

「勇者の祝福をいただいたギーゼルヘーア・フォン・ヘンゲンだ」

我の言葉に街長は膝をつき更に深く首を垂れる。

「よい。面をあげよ。そして我に求むものを述べよ」

街長によると、どうやら近くに中位魔獣が1頭住み着いたらしく被害が出ているとのこと。普段は低位魔獣程度までしか現れない地域であり、低位魔獣であれば街にいる冒険者でなんとかなるが中位魔獣では彼らの手にはおえないと。

「わかった、我にまかせよ」

街長から出没情報を聞き我ら4人が向かったところに居たのは中層の魔獣グレートベアだった。中位魔獣に分類されるとはいえその中では最弱に位置する魔獣。我は溜息をひとつつくと聖剣を一振りした。

「街の冒険者というものはこの程度の魔獣にさえ手を出せないのか」

我がつぶやくと

「勇者たるギーゼルヘーア様に比べては冒険者も可哀想でございます」

アスセナの言葉に納得し

「そうか。では、ライアン討伐の連絡をしてやれ。喜ぶだろう。終わり次第聖都へ向かうぞ」

そうして我ら4人は行く先々の街や村で我らにとっては雑魚と言える魔獣を討伐しつつ聖都への旅路を進んだ。

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