第157話 俺が守る
腕を1本失ったエルダーアークデーモンは攻防ともに脅威度が下がった。かと思ったけれど、腕を落とされたことで更に怒り狂い激しい攻撃をしてくる。しかし、それは激しいものの精度落ちたただただ激しいだけのものだった。そうは言ってもいくつもの祝福により強化された俺達であってもまともに直撃を受ければ無事で済む様なものでは無いだろう。だから、
「おらぁ、こっちだ化け物」
俺が切りつけると同時に敵を引きつける。そしてエルダーアークデーモンの死角からミーアが的確に剣戟を与える。相変わらずダメージの通りが安定しない。麒麟の言う半ばの力というのはこういう事ではないと思うのだけれど。その時のミーアの打ち込みからフッと力が抜けた。まずい、長時間の戦闘と今までにない対王種のプレッシャーで消耗が激しい。
「ミーア、一度下がって少しだけでも休養をとって」
「まだ、大丈夫よ。まだまだいけるわ」
「ダメだ。こいつを倒すめどはつき始めているけど、まだ決定的なものが足りない。長期戦になる、今は無理をする時じゃない。心配はいらない。ミーアが戻ってくるまで俺も無茶はしない。鬼ごっこをしているよ」
俺がそう言うと、ミーアはようやく折れた。
「分かったわ。少しだけ休んでくる。フェイも無理しちゃだめだからね」
そう言ってエルダーアークデーモンの敵意が俺に集中したタイミングで離脱していった。アーセルの側で身体を休めてくるだろう。1時間、いや30分だけでも横になれば狩人の祝福の効果で十分に回復できる。俺は無理をせずにその時間を稼ぐ。時に強く切り込むものの、無理はせず牽制的な攻撃を中心に立ち回る。時に大きくダメージを与えている感触はあるものの未だその原因が理解できない。ふと見るとアーセルがミーアに何か魔法を使っている。俺は詳しくは知らないけれど、聖女の魔法としては回復系と補助系があるはずだ。すると突然エルダーアークデーモンの敵意がミーアとアーセルに向いた。まずい、ミーアは休息中でアーセルは上位王種の攻撃に耐えられるものでは無いだろう。とっさに2人との間に身体を置き竜の混合魔法を放つ。まだ敵意を俺に向けられない。それでもこのままでは進めないと思ったのだろう。その場から届く攻撃をすることにしたらしい。魔法を放つ体勢に入った。なんとか怯ませることが出来ないかと俺は大剣を振るう。こんな時に限って手ごたえが無い。まずい、エルダーアークデーモンの放った闇魔法のコアに剣を振るい、魔法自体は俺が受ける。もう既にこの魔法には慣れたので魔法を受けた後すぐに動き始める。まずはミーアとアーセルの状態を確認した。うまく俺がカバーできたようだ。ふたりとも魔法の範囲に入らずにすんだようだ。とりあえず俺をどうにかすることにしたようで敵意がこちらに向く。
「そうだ、こっちに来い。今のお前の相手は俺だ。ミーアとアーセルは俺が守る」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます