第72話 ラーハルト
ラーカルでのスタンピード討伐で僕とミューの名前は帝国中に響き渡った。ザ・フォートレス・ファイ、ジ・アルマダ・ミュー。そんな呼び名で呼称され、相変わらずグラハム伯のお世話になりながら上位魔獣討伐を主に請け負っていた。僕たちを擁するグラハム伯は帝国内で益々発言力を増しているそうだ。
「おお、ラーハルトがジャンプした」
最近の僕の楽しみは2歳になる僕とミューの子供ラーハルトの相手をすることだ。日々成長していく我が子の姿が微笑ましくも愛おしい。
「パパー、遊んでー」
ドーンと飛びついてくるラーハルトを抱き上げ、高い高いをする。きゃっきゃとはしゃぐ我が子の頭を撫でほっこりしていると
「ママー、抱っこー」
「もう仕方ないなあ」
両手を伸ばしてミューに抱っこをねだるラーハルトと母性の笑顔でラーハルトを抱くミューに僕の頬は緩みっぱなしだ。
「ふふふ、天下に名の知れたザ・フォートレスもジ・アルマダも幼い息子には勝てないか」
グラハム伯もラーハルトを柔らかい微笑みで見守ってくれている。
「そういうグラハム伯もラーハルトを見る目がデレデレですよね」
「仕方ないだろう。お前たちの子供となればオレにとっても孫みたいなものだからな」
「じいじ、抱っこ」
ミューの腕の中からグラハム伯に向かって両手を伸ばすラーハルト。グラハム伯がデレデレしながら抱き上げる。
「んん、ラーハルトは可愛いなあ」
完全な爺バカをさらすグラハム伯に僕もミューも苦笑しつつ温かいものを感じていた。
さんざん遊んで遊び疲れたラーハルトが眠りにつくとミューはラーハルトをそっとベッドに寝かしつけた。それを見ていたグラハム伯も温かい眼差しをむけながら
「ミューも母親が板についてきたな」
「ふふふ、生んだばかりの頃はおっかなびっくりでしたからね」
僕の言葉にミューも反撃してきた。
「ファイだってまるで壊れ物を扱うみたいに抱いていたじゃない」
「しかし、お前たちふたりが人の子の親とはな」
「そうですね。守りたいものが増えるのは幸せですね」
「それでミューは鍛錬を再開したのか」
「何がそれで、なのかはわかりませんが、3日程前からですね。でも勘はくるってるし、色々鈍ってるし、戻すのは大変そうです」
「焦る必要はないさ。僕がいつだって付き合うから。ゆっくりでいい。でも僕が最後に背中を任せられるのはミューだけだからね」
「相変わらず、いつの間にか2人の世界に入り込むんだなお前達。で、そのいい雰囲気のところ申し訳ないが、本題だ」
「はい」
「皇帝陛下がお召だ」
「皇帝陛下が。一介の冒険者でしかない僕たちをですか」
「相変わらずの認識不足だな。お前達はもう帝国の守護神として見られているからな」
僕は言葉を失った。僕たちが守護神。いつの間にそんなことに。
「とにかく3日後に帝都に向けて出発するからな。準備しておけ」
「グラハム伯もいかれるのですか」
「まあ、俺はお前たちの身元引受人みたいなところもあるからな。それにお前達だけで行けと言われても困るだろう」
「それは、まあ確かに」
聖国での経験から必要なものを見繕い準備を進める。
「そういえば皇帝陛下への謁見のマナーというかルールみたいなもの教えてもらえますか」
僕は帝都に向かう馬車の中でグラハム伯に頼んでいた。
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