第33話 繋がる

 アーセルの事は気になりながらも僕とミーアは予定された中では最後の祝賀パーティーに出席していた。相も変わらずどうにか僕を取り込もうとする有力者たちに辟易としながらどうにか躱していると、なんとかというでっぷりと太った50絡みの男が声を掛けてきた

「そういえばハモンド卿は、勇者殿のパーティーについてご存知ですかな」

ハモンド姓は未だに慣れないけれど、今僕は公式・準公式の場ではハモンドと呼ばれている。しかし少々気になる言葉があったのでつい聞き返してしまった。

「勇者様のパーティーですか。何かあったのですか」

「ふふふ、どうも高位の付与術師をさがしているようですよ」

付与術師。特定の物に効果を付与し、主に結界石等の作成を手掛ける生産系の職業。しかし、勇者様のパーティが特に必要とするメンバーとは思えない。

「何か誤解があったのではないですか。勇者様のパーティーに必要な人材とは思えませんが」

「噂ですよ噂。その噂では、どこかの結界を修復する必要でもあるんじゃないかとね」

「いや、結界の修復なんて大ごとじゃないですか。破損している結界を見つけたなら国に報告して修復してもらうような話でしょう。いくら勇者様のパーティーでもそれはないのでは」

否定の言葉を紡ぐ。けれど、繋がってしまう。森の奥で怪我をした勇者様。その直後に街道に魔物が不自然にあふれ、さらにその僅か数日後に起きたスタンピード、深刻な表情で僕を訪ねてきたアーセル。ああきっと偶然なんだろう。そう自分に言い聞かせながら僕は不安を取り除くことができなかった。そのあとはずっと上の空だったと思う。横にいたミーアも恐らく僕と同じものを感じていたはずで……

考えすぎであって欲しい。それにあくまでも噂。ん、そういえば勇者様ってほんの少し前まで評判が悪くて落ち込んでいたな。グルグルと色々なことを考えてしまい落ち着かない。アーセルの事もある、一度勇者様のところに行くしかないだろう。ミーアにも話さないとな。でもこんなパーティー会場でそんな話をするわけにもいかず、寄ってくる有力者たちをどうにか躱しジリジリとした焦りを感じながらパーティの終わりを待つしかなかった。


 治療院のあてがわれた部屋で僕とミーアは困惑しつつ話し合いをしていた。

「僕としては勇者パーティーについての噂は、ちょっと放置するには気持ちが悪いと思ってる」

「そうね、せめて単なる噂なのか、何か理由があるのかくらいは確認しないと聖都を離れられないよね」

「かと言って真正面から問いただせるような問題でもないしなあ」

「とりあえず、実際に何をしているのかを調べるしかないと思うな」

「かと言って、僕たちが勇者パーティーの動きを調べているなんてのは噂になっても困る。となると追跡かな」

僕の言葉にミーアがうなずく。追跡、狩人の祝福の恩恵のひとつで本来は獲物を追い詰める際に気配を遮断することなんだけれど、街中で人に対しても使えるものだろうか。

「それと」

「それと、なあに」

「いつまでも治療院に居候しているわけにもいかないだろ」

「そうね。教会からのお呼びの都合でここに居候させてもらってたようなものだものね」

「それにもらった報酬があるから、当分お金に困ることもないからね。ここを出て適当な宿をとろう」

そこで僕は、ふと思い出した

「村はどうなるんだろう」

「助かったのあたしたちの他に34人だものね。いくらあの村が廃棄するわけにいかないとは言っても、36人じゃ再建は……」

「そこはやっぱり国の助けを借りるしかないかな」

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