第53話 指揮者
〜鈴代視点
ソ大連の親衛隊『赤熊部隊』が突入してくる。見た感じ彼らの機体は
しかし、後方に丙型を備えた部隊は、操者の力量にも依るが部隊のポテンシャルを何倍にも引き上げられる事がある。
テレーザさんが
「聞いてミユキ、あの円盤頭の指揮官機は親衛隊長のレフ・ヴェフトフスキー少佐。
…なるほど、うちでは丙型の香奈さんは部隊の目と耳に徹していたけれど、こちらは更に指揮官型に特化させているようだ。
オーケストラの指揮者に例えられる統率力を持った
正面からやり合っても勝ち目は無い。ここでも
「
《おう、戦闘距離なら動かない場合の半分くらいの効率で出来そうだぞ》
…その『半分くらいの効率』でどの程度の仕事なのか分からないんだけどな… まぁいいや、彼も小慣れた調子で仕事をしてくれているから、私が下手に口を出してヘソを曲げられては堪らない。
「じゃあ少し暴れるわよ? 奥の丙型をどうにかしないとダメみたいだから」
《了解、俺も盾は持っておくが防御は期待するなよ?》
「背中に据え付けておけば良いわ。…
「
「
「
「
三宅中尉の言葉が胸に
…これ以上減らす訳にはいかないよね。
突進して牽制射撃として
…と思ったのだけど……。
《やべぇぞ鈴代ちゃん、ハッキングの手応えがまるで無い。あいつら偏向フィルターを積んでねぇ… 始めから俺らが虫じゃないって知ってて襲って来てるぞ》
何という事… 『最初から人間を撃つ為に存在している部隊がある』という事は、それすなわち『ソ大連軍の上層部は虫の真実を知っていて対策を取っている』という事だ。
ダーリェン基地にやって来た東亜の近衛隊は、私達を反逆者として逮捕しようとしていたが、乱入してきたテレーザさんの部隊を虫として認識していた様に見えた。
つまり東亜の中心たる陛下をお守りする近衛隊よりも、更に世界の闇に近い場所に居る部隊が敵として出てきたという事だ。
「露払いは私がするからミユキは後からついて来て」
テレーザさんが幽炉を開放して赤熊部隊に突入する。通常の部隊が相手ならそのまま一気に奥の丙型に取り付ける速度だったが、赤熊部隊はいち早く反応して輝甲兵が壁を作り、逆にテレーザさんのT-1を包囲してしまう。
10式によく似た盾を構えた輝甲兵がテレーザさんの足を止め、周りに展開していた機体で包囲射撃を行う。T-1は
《どうする? ハッキングやめて盾使おうか?》
「いえ、周りのソ大連部隊にハッキング出来るようなら継続して。こちらは私達で何とかするわ」
私以下、小隊員らがテレーザさんを救出すべく突入するが、待ち構えた様に我々1人につき2機の輝甲兵が阻止に来る。
「邪魔しないで!」
手に持つ
相手は人間だ。分かっている。彼らにも家族や友人が居るだろう。
相手はソ大連だ。分かっている。下手したら国際問題になるだろう。
でも私達はここで止まる訳にはいかないの。出来る限り手加減するから邪魔をしないで頂戴。
私の銃から弾丸が射出される瞬間に横目に見えた、いや感じたのが私に取り付いてきた2機のうち1機が側面から私を撃とうとしてくる場面だった。
ぞくり、という悪寒と共に急いでバク宙の要領で回避運動を取る。こちらを撃とうとしていた敵に意識を向けると、目標はすでに回避運動に入っており、先程私の前にいたはずの輝甲兵がこちらに向けて発砲してきた。
2機の連携が神業すぎる… これが『指揮者』とやらの力なのか? 事前にテレーザさんから情報を聞いていなかったら、私でも敵の動きに反応できないままに撃墜されていたかも知れない。
私だけでは無い。小隊の全員がそれぞれ2機の輝甲兵に挟まれて翻弄されていた。
「
三宅中尉の号令に沿って小隊員達が集結する。赤熊部隊との接敵からほんの数秒で全員がどこかしらに被弾していた。
おそらくは敵がまだ本気で無く遊んでいるのだろう。状況から見て明らかに被ダメージ量が低い。そうで無ければ集結する
《一応周りのハッキング可能な敵は全部処理したぞ。とりあえず盾係を再開するで良いか?》
そうだった。私には
「今、真後ろにいる奴、そいつ1人を徹底的にマークして。そいつからの攻撃を防いでくれると助かる!」
指示と同時に正面の敵に飛び込む。例によって私が担当する正面の敵をA、
私の機動に合わせて敵Aが回避行動に入り、敵Bが私の死角から射撃を行おうとしてきた。
私は避けない。正面に敵Aを見据えたまま食らいつき、
敵Bは背中の盾を警戒したのか、私が敵Aを撃つ瞬間に合わせて発砲してきた。こちらが銃を撃つ瞬間は盾の操作が出来ないと判断しての事だろう。
確かにそれは正しい。私は
でもこの
結果敵Aは蜂の巣となり機能を停止、敵Bは無傷の私に対して明らかに
敵Bを追撃しようとする私の背後にいつ現れたのか、3機めの輝甲兵(敵C)が私を狙って銃を撃つ。それを盾で防御する
私はすかさず反転して、不発に終わった自分の攻撃に納得できずに呆然としている敵Cに、左手で抜いた鉈を突き立てる。
…やれる。私1人ではどう頑張っても多方向からの同時攻撃に対処できなかった。でも今は
「きゃぁぁっ!」
見れば
救援の為に包囲陣に飛び込む私。しかし敵はそれを読んで私を誘っていたのだ。わざと包囲に穴を開け私を誘い込む。そしてまんまと考えなしに飛び込んだ私の背後に3機の輝甲兵が回り込んだ。
これは痛恨のミスだった。1機は回避で、1機は盾で攻撃を
万事休す… これで終わりなの…?
3機めの輝甲兵の銃口が火を吹こうとした正にその時、持ち上げられた敵の
銃の暴発か? とも思ったがそうでは無かった。3機めの輝甲兵は直後立て続けに3発の弾丸を食らって、頭と両腕を破損したまま戦闘空域から弾かれていった。
一体誰が…? 小隊員達は全員私の前方に居る、田中中尉とテレーザ隊は『すざく』で修理中、テレーザさんは現在進行系で包囲されて必死に
《…おぉい、マジかよ。まさかまさかのゲストの参戦だぜ…》
あれはまさか……。
「その変な腕を付けた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます