2020/05/23
2020/05/23
改まって自省する事ではないと殊更に自覚を持ちながらも言わずに居られない事実を告白しておきたい。生来、病的なまでに飽きっぽい性格をしている。
趣味と言える物も多少は有れど興味の波は著しく上下が起こり、人付き合い等にもその傾向は色濃く出ている。食生活などは言わずもがな、「味覚ですら浮気性とは救い難い」と彼には小言を言われる始末。極めつけは物書きにも同様の事が言えるのはご存じの通り。書きかけの作品を長らくうっちゃらかしては日記もいつしか更新が止まり、驚くなかれ今度は回顧録を書き出すと言う暴挙に出始めた俺を誰か叱ってはくれまいかと誰某ともなく願ってやまない。
折角スカウトを受けて始めた書評書きのバイトも二カ月で既に飽き始めているのだからもう筆を折ってしまえと野次が飛んできたとして否定する材料の持ち合わせが無い事は明らかなのであった。
「途方もない自虐から始めないでよ、反応に困るから」
「お、出たな唯一飽きないもの」
「名前はアキなのに、ってうるっさい」
あぁ空想の彼にこんな空寒い洒落を吐かせている辺り雀の涙の才能もきっと枯れ果てたのだらう。
「…今更振り返ってみる度胸が有ったとは知らなかったよ」
纏う雰囲気を変えて彼が呟く。細めた眼は呆れの現れなのか、或いは故の無い寂寥からなのか。
「思い出の中にしか居ない相手を想う以上、振り返らない日は無いと言って差し支えんね」
自嘲しつつ居直るように吐き捨てた。抱える感情は、態度とは逆にもう少し穏やかな物である筈なのだが。
「此れを言うのも何度目か知れないけど、嬉しいんだよ?」
成る程声には確かに其れを思わせる弾みが含まれている。だとするならば先程の視線も其れに倣って慈愛を込めていたと言う事だったのだろう。贔屓目を抜きにし控え目に評しても美形と言って相違ない彼の笑顔には其れに伴う儚さからどうにも複雑な感情を穿って窺う癖が抜けてくれない。
「端的に言えば分かりづらいんだ、お前の反応は」
「何でいきなり喧嘩腰?買ってやろうかコラ」
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