25-2


 寒い中、俺はトラックから搬出されるバラ荷物がベルトコンベアに上手いこと乗るように手をつける(何て表現したら良いか分からん)作業をやっていた。ある程度搬出し終わってところで、俺は手を腰に当てて仁王立ちポーズを取って一息ついた。まぁ向かいにはまだ作業している奴がいるのだが、やること終わったことだしと気を少し抜いた。が......それを目にした渡邊が俺のところに来て怒り口調で俺の姿勢を咎めやがった。



 「目の前に作業している人の前でそうやって腰に手をあてて突っ立ってるのはおかしいやろっ!」

 「......いや、それはそうですけど...」

 「態度改めてほしいな。ちゃんと仕事してくれよ?」



 それだけ言うと渡邊は作業に戻った。

 ......いや、確かにその通りなんだけどさぁ、そこまで怒らせて言うことか?お前が不愉快に思っただけやろ?何でキレられなアカンねん。俺はそんなことよりもっと不愉快な思いさせられてるのに、目の前で雑談しやがるあいつらの前で黙々と働いてたんやぞ?それはどうなんや、あ?

 ついさっきの渡邊の若干理不尽な注意に苛つきながら再び作業していると......



 「渡辺さん、ホンマですかそれってー」

 「うん。俺も最初見た時はマジかよって思って――」



 俺の近くで作業している渡邊が、隣にいる里山と雑談しているのを目にする。話しながら作業するのはまだ良い。だがあいつらは...


 「――。www」

 「...!――。ww」


 手を休めて、腕を組んで、完全にサボり姿勢で雑談してるだけだった。しかもそさらに隣と向かい側では忙しく働いている奴がいるのに、だ。

 さっき俺が同じようなポーズを取ってたら注意したくせに、自分らは許されるっていうんか?


 ――はぁ?ふざけんな!!


 よく見れば、さっきの俺と同じポーズで一息ついてる奴がいるのに、渡邊は一切注意しやがらない。結局は別にそういう態度で良い言うことやんけ!

 馬鹿馬鹿しく思って、後日同じ作業してる途中で一息つく時にまたあのポーズをとっていたら、渡邊はまた咎めに来た。そこで俺は先日の渡邊自身らのことについて指摘してやると......


 「は?何を言ってんの?どうでもええやろ今そんなことは。今杉山君が人の前でそうやって問題ある態度取ってんのがおかしいっていう話で――」

 「―――いい加減にしろよっ!!何で俺ばっかりが悪く言われなアカンねん!自分らは良くて俺はアカンとか何なん!?自分らのこと棚上げにして俺ばっか非難してんじゃねーよっ!!」



 限界だった。その場で思っていること全てを渡邊に叩きつけてた。怒りをぶつけた。

 普通の人間だったら、この程度ならこらえてみせたのだろうが、生憎俺はもう普通なんかじゃない。学生時代から続いた虐めと以前の引越センターでのことで心がだいぶ荒んでいる俺は、簡単にブチ切れてしまうようになってしまっていた。

 ここでブチ切れてしまったら結局里山たちの思うつぼだってのは分かっていた。だけどこの頃の俺にこれ以上堪えるという選択肢はなかった。一度決壊してしまったら最後、そこからはひたすら罵声を浴びせ続け、所長に帰らされて、明日からもう来なくていいとの電話が入って、俺はまた終わった...。



 ――どうせ里山たちは今頃俺がクビになったことを喜んで、嘲笑ってるんだろうな。そして渡邊は俺なんかさっさと忘れて、なかったことにしてるんだろうな。せいぜい“虫けらが何か喚いた”って思ってるんだろうよ。


 また俺は、理不尽にハブられて、貶められて排除されたんだ...。ちょっと会話が出来ないから、コミュニケーションが取れないからとかいう理由で、俺はこんなにも差別を受けて弾かれるっていうのかよ。


 いや―― “杉山友聖は理不尽に虐げられる”運命だから、か?そういう運命だから俺だけが理不尽に、不当に差別されて排除されるのかよ。


 ああそれなら理解できるよ。同時に諦めとさらなる憎悪も芽生えたよ。


 お前らがその気なら、俺も理不尽ってやつを存分に行使して、欲望のままに行動してやるよ。



 お前らをぶち殺してスカッとしてやろう...!!

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