ジュンズ・ブライド
荒井 文法
カタオモイ
青い空で輝く銀色の雲が、高く、大きく、空に広がっている。
暑い空気と喧しい蝉音に包まれながら、網戸越しにその光景を眺めていた。
とっくに見飽きてしまったテレビが笑い声をコソコソ上げている。
じっとり汗が滲み続け、身体が溶けてしまいそうな気がする。
体に触れるものすべてが疎ましくて、エアコンの風すらも不快で、電源を消した。
自分の心も消してしまいたい。
冷たいフローリングの上に寝転べば、その固さが不快で。
柔らかいカーペットの上で大の字になれば、投げ出した手足を切り取りたくて。
膝を抱えて丸まれば、鼓動と息の根を止めたくなって。
片想いの辛さは知っているつもりだった。
甘かった。
「カスミ」
重い肩を上げて、ピストルのような彼女の名前を顳顬に突き付ける。
頭の中をすべて吹き飛ばしてくれますように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます