赤いハイヒール
朝。
街の空は広告で埋め尽くされていた。どれもこれも金切り声で、自社の製品の宣伝に夢中だ。
オレは地面だけを視界に入れて歩く。空をちらりとでも見たが最後、頭の中にはセールストークが無尽蔵に湧きあがってくる。
ーー発狂確実である。
クソ、もう何日も外で顔を上げていないおかげで随分と猫背になってしまった。
宣伝に混じって、そこら中から靴音がする。たくさんの人が歩いているらしい。
イライラを募らせた両肩を揺らして歩いていると、アスファルトばかりの視界に、赤いハイヒールと白い足が見えた。行く手を塞ぐように立ち止まっている。
ーー知り合いか?
オレは少しだけ顔を上げた。
足首から先には、何もなかった。
慌てて周りを見る。
人はいない。
ただ、足首だけが歩いていた。
頭上の広告には、赤いハイヒールを履いた足首が映し出されていた。
靴音が、脳内に溢れ出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます