猫とサナトリウム

14歳の頃 僕は死んだ筈だった

逆光レイトショーが清潔に微笑んだ

「まだその時じゃないのよ」 …だってさ。

焦点の合わない自嘲は閉じ込めた


7歳の頃 僕は人殺しと呼ばれた

明滅ロードショーはトリカブトの形相で

「おまえさえ生まれなければ」 …だってさ。

循環器の騒ぎは新聞も見て見ぬ振り


誰かの未成熟で無責任な肯定は

エタノールを薄めてく一方だ


手製のサナトリウムに意識を逃がした

無味無臭の秒針を過食嘔吐して

白い三日月が親指に帰ってくるまで

羨んでいたい 桜が散る速度を


20歳の頃 きっとまだ死ねずにいる

無構想の台本がノンブルを飲み込んだ

「誰も悪気はないんだよ」 …だってさ。

罪も迷子なら此処に住んでいてもいいよ


誰彼の手垢にまみれた「愛」にいざなわれて

虫唾で足場を溶かす


セオリー通りならそろそろ射す光なら

何処かへ逃げていった

無い 要らない 変われない

薬の数が合わない


今日も遣る瀬無しに命を噛んでる

無理心中の譫妄が自律を破りそうだ

黒い猫が僕のところに帰ってくるまで

夢の中にいたい だけど、せめて、

救われないシナリオしか見せないでくれ


手製のサナトリウムに本音を逃がそう

無味無臭の秒針にひどく嫉妬した

白い三日月が親指に帰ってくる日まで

憧れていたい 幕が下りた童話に

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