pH7

明るい色の傘は、買ってもらえなかった

哀しい色の傘は、わざと置き去りにした

都合よく記憶強くよく洗えたらくよくよしないのに


あの娘と同じ香りの弱酸性で

傷が開くほど洗ってみても

喉に目玉が引っ掛かるから

慌てて漂白剤に飛び込んだ


破れかけたリトマス試験紙

まだちゃんと飲み込めずにいる


雨の死骸が六色でも眩いのは

わたしのような人が

わたしのような手で

きっと、きっと

わたしのような心を

わたしのように殺したからね


染まりきらないリトマス試験紙

まだちゃんと手の中にある


過去の残響が紺色でも暗くても

きっと、あの子みたいに

きっと、あの子みたいに


今年はパープル色の傘を買ったよ

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