第113話 娘に彼氏が出来た父の心境?
ィグナリオンにブラッシングすることは、叶わなかった。
夕飯のあと、若い娘は、若い男性の部屋に行っちゃだめとリリティスさんに止められたから、ついて入れなかったのだ。
仕方なく、小屋に戻って、影のシー
でも、シーグと同じ大きさで、同じ手触りなのに、ブラッシングは出来なかった。
影で出来た魔力の投影だから、抜け毛が出来る訳ではない。ブラシも通らなかった。撫でた感触は同じなのに。
そんな事で、ちょっぴり消化不良で休む事になる。
《寂しい?》
「ううん。将来のためだし、元々まだ15歳だもの。彼氏と暮らすのは早いわ」
《彼氏?》
フィリシアの気遣いに前向きに答えると、サヴィアンヌが食いついて来た。ほんとこーゆー話好きなんだから。
「私達の国では、お付き合いしている男性の事を、本来は三人称代名詞のはずの『彼氏』と称するのよ。普通は恋人同士って言うんだけどね、近代(昭和初期)に入って急にそういう言い回しをするようになったのかな?」
言葉は常に僅かづつ変わっていく。例えば、何か起こる毎にその場の対処をしていては間に合わないとかそういう意味で、ドロナワと言う言葉がある。
泥棒を捕らえた後になって、捕縛用の縄を綯う所から始めるという言葉だけど、みんな感覚的に、もしかしたら
話はそれちゃったけど、まあ、第三者の男性を指す言葉だった『彼氏』が、お付き合いしてる男性を特定して呼ぶ言葉に変わっているのだ。
それは、言葉の意味だけを通訳する大神官達に刷り込まれた私達の疏通術では、うまくニュアンスが伝わらないのだろう。
《じゃ、シーグから見たシオリは『彼女』ナノ?》
「そうそう。そんな感じ」
《彼氏彼女だけジャ、普通は誰の事言ってんダカ解かんないワネ。シオリ達の世界って、言葉が難しそうネ》
「そうかも。自国民も、結構誤用や、意味を取り違えて受け取ったり、それが元でトラブルになったり? あるかもね」
渋谷語とかJK語とか、よくわからない流行語とかもあるみたいだし。私は使わないから解らないけれど。
「同じ国の中でも土地によって方言があって、それでも違ったりするのよ」
《ワタシは、シオリの国には行っても面白くなさそうネ》
「そうかなぁ? どっちかって言うと、いざ行ってみれば、あれもこれもと興味津々だと思うけどなぁ」
影なので重くないし、温かみも触った瞬間の錯覚だけで熱くも冷たくもないので、ベッドの上に上がって足元に丸まるシーグを追い払ったり、逆にくっついたりしないで、そのまま眠った。翌朝、サヴィアンヌが、本物の尻尾で寝たかったと怒ってたけど。手触りは変わらないのに、やっぱり小妖精サイズのサヴィアンヌにしたら、違うのかな。
翌早朝、狼の影分身シー
ジーッと睨み合ったあと、急にふいっとシー
少し経って再びシー
その間、カインハウザー様は一度もシー
まさか、影分身のシーグ②の様子がおかしいと、何か違うと感づいてるのかな。
配膳を手伝っていると、リリティスさんが食堂に来た。
シーグ
「昨日、あなたがィグナリオンを連れてきたでしょう? しかも、本館に泊めちゃって。シオリと仲良さそうだったから、もしもの事があったらいけないと、気になってたみたいよ? あんまり寝てないかもね?」
クスクス笑いながら、カインハウザー様を見るリリティスさん。
「もしもって、まさかの、よく言う何かの間違いとかって男女の問題ですか?」
「そう、それそれ。もう、殆ど娘に恋人が出来たお父さんよね」
「はあ⋯⋯」
本当に、なんとコメントしていいか解らないわ。せめて妹に彼氏が出来て内心穏やかでない兄くらいに⋯⋯
「あら、関係性がちょっとズレてるだけで、意味合い変わらなくない? どっちにしろ、落ち着かないみたいよ? ふふふ」
カインハウザー様のあの様子は、別にシー
「本当に、シオリちゃんはありがたいわね。冷静沈着を崩さない
冷静沈着なのはいいことなんじゃないのかな? それを崩せって⋯⋯ カインハウザー様は迷惑なんじゃないかな?
そう思ったけど、リリティスさんはそうは思わないみたいだった。
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