敵の物は自分の物

イヴァンが駆使する

ハイパーレールガンで

巨大ゴーレムの数は

減りつつあったが、

まだまだその残存数は多い。


レーザービーム兵器や

複製イヴァンの貫通魔法でも

ゴーレムの弱点を狙い撃ったが、

ピンポイント直撃は中距離からでも

なかなか当たるものではなかった。



「あのゴーレムは

遠隔操作型なのか?

それとも憑依型か?」


勇者は横に居るイヴァンに問う。


「遠隔操作型でしょうな、

操っているのはおそらく

魔王本人ではないかと」


「アンチ転移フィールドも

魔王の思念が張っているものでしょう、おそらく」


『それならまだ目はあるか』


思い付いた策を

イヴァンに話す勇者。


「勇者様は本当に

面白いことをお考えになるな」


勇者が思い付いた策のために

志願者が集められることになる。


-


集まったのは、

以前神父と呼ばれる

勇者のクローンによって、

死にかけていたところを

元の年老いた肉体から

複製勇者の若い肉体に

転移魂魄された者達ばかり。


「どうせ一度は死んだも同然、

みなの役に立てるなら本望ですな」


元老人達はみな口々に

似たようなことを言っていた。



まず第一段階として、

魔導師イヴァンを

ゴーレム軍団の真ん中上空に

転移させる勇者。


イヴァンが術を発動させると

ゴーレムの動きは鈍くなり

やがてその動きを止める。


「思念ジャマーとは、勇者様は

本当に面白いことをお考えになる」


魔王の遠隔操作が

思念であったとしても、

それが何かしらの波長である以上

それを妨害する波長も存在する、

勇者はそう考えた。


長くは無理だが、

これで一度すべてのゴーレム達、

その動きを止めることが出来る。


ゴーレムの動きが止まった時点で

アンチ転移フィールドは

解除されている筈。


所詮はただの操り人形、

操る糸が切れてしまえば、

自ら動くこともフィールドを

維持することも出来ない。


この時点でそのまま敵ゴーレム達を

転移消滅させることも出来るが、

勇者の作戦にはまだ続きがあった。


-


ここで、せっかくなので

元老人達を鼓舞するべく

勇者は檄を飛ばす。


「自分の物は自分の物、

敵の物は自分の物っ!」


「敵がすごい物を持っているなら、

奪ってしまえばいいじゃないかっ!」


「おぉぉぉっ!」


相変わらず酷い事を言っている勇者。


元老人達もノリと勢いで

誤魔化されているが。


しかしこれこそが

この勇者のブレない本質。



「勇者である我が命ずる、汝の魂よ、

の魂なき哀れな物の魂となりて、

弱き虐げられている者達の力となれっ!」


魔法の詠唱っぽく言っているが

あくまで魔法ではなく能力である。


転移魂魄てんいこんぱくっ!」


現在複製勇者の魂であり、

元老人の魂であった魂達が

ゴーレムのボディへと転移し

憑依を果たす。


-


そして人間の魂が憑依した

ゴーレムの元へと転移する勇者、

ここで最後の仕上げとなる。


「この能力は

あまり使ったことが

ないんだがな」


味方ゴーレムの手には

巨大な鋼鉄の杭が出現、

その先は鋭く尖っている。


全くの無から

有形物を創り出すクリエイト能力、

内部構造が複雑な物を創り出すことは

まだ勇者には出来なかったが、

これぐらいの簡単な物であれば

全く問題はなかった。


味方ゴーレムはその杭で

動きが止まっている敵ゴーレムの

心臓部を次々と刺して回る。


百メートルの巨体が次々と

音を立て崩れ落ちて行く。


「最後はなんだか

ドラキュラの倒し方みたいに

なっちまったな」


元老人の魂を持つゴーレムの杭打ちと

勇者のクローン部隊による転移消滅で、

巨大ゴーレム軍団は一掃されるのだった。






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