難攻不落の武装要塞

ついにこの世界の地形まで

変えて見せた勇者。


勇者のこの世界への蹂躙は

尽きることはないのか。



強引に大陸を二分した勇者は、

その境界線に山脈を築き

魔王軍侵攻への防御壁とした。


それだけに留まらず、山脈を

魔王軍迎撃のための要塞と化すべく

さらなる仕掛けを施していく。


山の西側側面、

つまり人間エリアから見た外側、

そこに転移強奪で

一つビルを出現させると、

複製能力でビルをコピーし

境界線に次々とビルを立ち並べた。


ビルの窓には

機銃、大砲、ロケット砲、

対地ミサイルなどがずらっと並べられ、

ビルの屋上には

空からの攻撃に備えた

高射砲、対空ミサイルなどが設置される。



これ等の武器も全て

複製能力によってオリジナルから

複製されたものであり、

物質の質量や原材料など

原理がどうなっているのか

勇者にもよくわからなかったが

この上なく便利なものであり、

勇者にはちょっとした

複製ブームが来ていた。


しかし自分のクローンなどの

有機的な生命体については

生きているクローン細胞の成長速度を

人の目には見えないぐらいに極限まで早め、

刹那的に作り上げているという解釈で

勇者もギリギリ納得出来たのだが、

無機質についてはどうにも解せない。


強いて理屈づけるのであれば、

無機質が一度有機質に変換され

クローンの理論と同様に

目にも見えない速さで分裂、成長し

完成後無機質に戻るという辺りだろうか。


勇者が知らぬ内に

原材料が転移強奪されて来ており、

瞬時に構築されているという可能もある。


いずれにしても

複製能力のチートさに勇者は歓喜し

ちょっとしたマイブームになっているのは

間違いない。


やはり戦いは最終的には

物量勝負になってしまうのか。


-


山脈の要塞化に話を戻すと、ビルを立ち並べ、

人間世界の現代兵器で武装化しただけではなく、

ビーストマスターやドラゴンマスター能力を使い

山脈に魔獣やドラゴンの住処をつくらせ、

そこに住み着かせた。


当然それは魔王軍が

山脈越えを決行しようとした際に

襲わせるためであり、

ただでさえ険しい山脈を

魔獣やドラゴンに襲われながら登るのは

まず不可能なように思われる。


さらに溝となっている水域地帯、

水中には機雷を設置し、

この先出来れば人食魚も

住まわせておきたいところだ。


そして川を挟んだ向こう側には

地中のトラップとして

サンドウォームと巨大土竜、

以前使った地雷地帯も

新しい地雷を補充して残してある。



逆を言えば、

東側の人間が西側に渡ることも

不可能に近いということになるのだが、

最初に東側の人間には言質を取っている筈。


「このまま魔王軍に皆殺しにされるか、

この世界の半分をぶち壊して生き残るか」


その言葉をようやく

実現しただけのことなのだ、

勇者にとっては。



この武装要塞を造り上げたことによって、

勇者と魔王軍の最終決戦の場は

地上以外で行われることになる。






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