トラック、アタック

勇者は何故かまた

ダークナイトと対峙している。


漆黒の鎧、黒光りする剣。


どう見ても

以前と同じにしか見えないが

本人いわく別人であるらしい。


で、ダークナイトの罵倒は

まだ延々と続けられていた。


「大自然の恵み、

その環境を汚染するなど

人としてあるまじき行為、

なんたる愚行」


『いや、

お前らは人じゃないだろ』


立ちションして

魔王軍に怒られる勇者というのも

人としていかがなものであろうか。



「まぁよい、

新しき勇者よ、

貴様には早速ここで死んでもらう、

貴様のような愚か者を

生かしておくのは

世のためにならんからな」


もはやダークナイトが

世の中を語り出している、

魔王軍なのに。


『それ、どっかで

聞いたことあるなあ、

すげえデジャブだわ』


『しかし、何で

俺のサシの相手って

ダークナイト限定なんだ?』


勇者がこの世界にやって来てから

まともに一対一の勝負をしたのは

前にダークナイトを相手にした時の

ただ一度切り。


以前の勝負がまともだったかは

異論のあるところだが。


-


黒光りする剣を構えるダークナイト。


ここまで来ては仕方がないので

勇者も背負っている剣を手に持つ。


「むっ!その剣は

我が同胞のものではないかっ!」


「倒した敵の剣を奪うなど、

一体どこまで浅ましいのか、

この下衆な勇者は」


そこは勇者も痛い所を突かれた、

あの時のことは勇者からしても

相当な黒歴史。


剣だけではなく鎧まで

死体から剥ぎ取って奪ったなどとは

口が裂けても言えない。


「我が同胞の無念も

ここで晴らしてくれようぞ」



改めて剣を構えるダークナイト。


「いざ、尋常に、勝負!」


ドンッ!!


時速二百キロオーバーで

横から突っ込んで来た

大型トラックに轢かれて

ダークナイトは吹っ飛んだ。


全くの不意を突かれ、

宙を舞うダークナイト。


さらに飛んだ先でも

時速二百キロ超の

大型トラックが出現し、

もう一度ダークナイトを轢いて

吹っ飛ばす。


再び宙を舞ているところを

今度は後ろからトラックが。


ドンッ!!

ドンッ!!

ドンッ!!


それが何度も続き、

ダークナイトは一度も

地面に着くことなく

宙を舞い続け

最後はぼろ雑巾のように

地面に転がった。


『いや、俺別に

剣で戦うとか言ってねえし』


まぁダークナイトが言っていた悪口も

ほとんど当たっているので仕方がない。


そんな卑劣な敵が

何故正々堂々勝負すると思ったのか。



またもダークナイトは

勇者の新技の実験台にされてしまった。


しかも今度は

延々と大型トラックに

轢かれ続けるという

異世界住人としては

この上ない屈辱的な方法で。


勇者も何故か

自分の死因になった大型トラックに

変なこだわりを持ち

ちょうど試してみたいと

思っていたのだ。


名付けて『大型トラックアタック』。



轢かれて転生なり、

転移なりするのは人間であり、

異世界住人が大型トラックに

轢かれるのはよろしくない。


『こいつも

トラックに轢かれたことだし、

転生とかすんのかな?』


「しかしトラックすげえな、

轢かれるとこんなんなるんかよ、

そりゃ俺も死ぬわ」




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