キティは鈍感キャラじゃないのです!!
ある日を境に、ジークの私に対する対応が今までとは違った種類の甘さを含んだものになった。
「キティ」
「なあにジーク」
呼ばれたのでなんの用か聞き返したけど、ジークは無言で私を抱き上げるだけだった。あれか、呼んでみただけってやつ。
ジークに頬同士を擦り付けられ、むぎゅむぎゅされる。
「キティは可愛い、可愛いな」
「うん、ありがとう」
「昼食のデザートは俺の分もいるか?」
「うん」
「午後は叔父上の所に行くのか?」
「うん」
「結婚式は来年でいいか?」
「う……いやいやいや、どさくさに紛れて重大な決断させないでよジークぅ」
流れでうんって答えちゃうところだったじゃん。養子の時はハメられた感満載だったからね。同じ轍は二度も踏みませんよ。
「キティ好きだ」
「うみゅ」
再び頬をスリスリされる。
最近ほんとにジークの甘さ増したなぁ。
私は鈍感系ヒロインではないのでさすがに気付く。
ふむ、ジークってば私のこと好きだな、と。
もちろん恋愛的な意味で。
そのことに気付いた私がジークとすぐに恋人になるかといったらそうでもない。
ありがちかもしれないけど、私は人に恋をする気持ちというのがよく分からない。ジークのことは大好きだし愛してるけど、それが家族じゃなくて恋人に向ける種類の愛なのかが分からない。
最近まで引きこもっててほとんど他人との関りがなかったので他の魔族が当然にしている経験を私はしていないからかもしれない。ちょっと頭はいいけど精神が子どもっぽい自覚はある。
ジークに甘えたい気持ちはあるけど、それは多分兄のように思ってるからだ。
「よ~しよ~し、キティはかわいいな」
「……」
そんな私の内心を知ってか知らずか、ジークは赤ちゃんをあやすように私を揺する。
……とても想い人に対する行動とは思えないよジーク。
私が恋愛感情が分からない理由の一端は絶対ジークにもあると思う。
「そうだキティ、キティは成長したいか?」
「? それは暗にキティの精神が未熟だと……」
「違う。キティの性格は可愛いからそのままでいい。身体的に成長したいかしたくないかということだ」
ジークの言葉に私は首を傾げる。
身元も血の繋がった家族も分からない私が成長できる筈ないのに……。
「叔父上とキティの魔力の質と波長が偶然にも一致した。叔父上に魔力をもらえばキティも成長できるぞ」
「……」
「キティ? ……固まってるな」
キティが、成長……?
「ぼんきゅっぼんの夢が叶う!? 色っぽい大人のおんなになれるの!?」
「あ……ああ、まあこれからの成長次第でなれるんじゃないか?」
ジークが目をそらしてそう言う。
絶対思ってないな。
「ジークは私に成長してほしい?」
「ん? キティの愛らしさは外見が多少成長したくらいでは変わらないからな。変わるとすれば俺が周囲からロリコンと見られるかそうじゃないかだ」
「キティ成長しようと思う」
「キティがしたいならそれでいいんじゃないか?」
ジークがロリコン扱いされるのはダメ……ダメだよ。魔王様の威厳がなくなっちゃう。
「キティ急いで大きくなるね……」
「フッ、慌てずゆっくり成長しろ。あと、俺の気持ちに対する答えも急がなくていいからゆっくり考えてくれ」
付け足された言葉に私は内心ドキッとした。
「『キティ』の時間はまだ動き始めたばかりなんだ。いつか、答えが出たら教えてくれ。幸い俺達の寿命は長いからな、いくらでも待つ」
「ジーク……」
「もしキティの答えが否でも構わない。キティの気持ちが定まった時、俺からちゃんと気持ちを告げさせてくれ。いいな?」
「う、うん」
ちょっと気恥ずかしい気持ちを抱えつつもコクリと頷く。
すると、フワッと花が開くようにジークが微笑んだ。
「ありがとう、キティ」
「……!」
その微笑みはあまりにもきれいで、優しくて―――。
ドクンと、私の中に何かが芽吹く気配がした。
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