第18話 入学式 幼女スピーチ

入学式。幼稚園、小学校に続いて3度目になる。前回の人生入れたら8回かな?

もうこなれたものである。校長先生の長い話も余裕で聞き流せる。

ごめん、嘘。早く終わって欲しいです。マジで話なげぇ!

生徒が皆立っている朝礼とかだったら死人が出てるレベルで長い。

話が二転三転して結局何の話しがしたいのか理解できん。ただ話したいだけだろ?


入学式にふさわしい晴天に恵まれた→ラインでスタンプの使い道がわからない→孫に口が臭いと言われた→最近の日課が朝の散歩である→禁煙してみた←今ここ


信じられるか?これ入学式の挨拶だぜ?


あ、ガタイの良い男性教諭二人に両腕を掴まれて退場させられた。しかもそれでもまだ喋っている。

朝礼や式等の行事毎にアレが始まるのか・・・憂鬱だ・・・


『続きまして、在校生代表からの祝辞。白銀さん壇上へお上がりください。』


壇上に上がって行ったのは、真っ白い学ランを着た男子生徒だった。

ん?ここの男子制服ブレザーだったよね?何あの制服。


『新入生諸君!私はこの学園の生徒会長をしている、白銀しろがね隼人はやとだ。我々生徒会一同新入生を歓迎する!生徒会に興味がある生徒は私に声をかけたまえ!来るもの拒まず・・・ではないが優秀ならば歓迎しよう!』


生徒会長の白銀はそう言って壇上から捌けた。

キャラの濃い生徒会長だな。小学校の時の生徒会長なんて地味な子だったぞ。

あとあの白学ランなに?


『生徒会長、ありがとうございました。・・・続きまして新入生代表、逆神瑞穂さん壇上へお上がりください。』


あ、そう言えば挨拶やるんだった!



な、なん・・・だと!?

壇上の机が高すぎて完全に瑞穂が隠れてしまった!

慌てている瑞穂に気がついた教師が急いで踏み台を持ってきてくれた。助かった。


踏み台を使ってようやく机がら顔を出せた。マイクの角度下に下げないと・・・


『新入生代表、逆神瑞穂です。』


あ~、スピーカーから自分の声が聞こえる。

甘ったるくて舌足らずな幼女ボイスだ。正直、これだけは特訓してもどうにもならなかった。舌足らずになるのは構造上仕方ないっぽい。瑞穂は全体的に発育が遅いので当然口の中もお子様のままなのだ。なので仕方ないと諦めた。


『柔らかく暖かな風に舞う桜とともに、僕たちは今日、この白蘭学園中等の門をくぐりました。咲き誇る桜の花々は____』


担任の先生から事前に渡されていた台本をそのまま読むだけの作業です。


『_____私たち新入生は白蘭学園中等部の生徒としての誇りを持ち、実りある中学校生活を送りたと思います。』


パチパチパチパチ と沢山の拍手がおこった。


踏み台から降りてちょこちょこと壇上から捌けて自分の席に戻る。

その間に小声で「カワイイ」「ちっちゃい」「声まで幼女」などと囁かれた。

よく言われるので気にならない。


席に戻ると蓮華ちゃんが「素敵だったわよ」と頬を染めて言ってきた。

「ありがと」とにこやかに返すと鼻を押さえて空を仰ぐ蓮華ちゃん。

最近この謎行動をする。大丈夫?って聞くと毎回「これは・・・癖だから平気よ。」と返されるので今はもう何も聴かないでスルーしている。


話は変わるけど蓮華ちゃんは瑞穂や幼馴染組との会話は普通なんだけど、それ以外の人たちが居ると、「~~ですわ」とか「~~ではなくってよ!」等マンガに出てくるお嬢様みたいな話し方をする。いや、実際お嬢様なんだけどさ。


さぁ入学式も終わったし教室へ行こう。

自己紹介をして教科書配って今日は終わりだけどね。

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