第92話 ホーチミンのサイゴン動植物園へ行ってきた

 ベトナム人女性のトゥイの実家でもあるベトナムのベンチェにて、独身証明書、婚姻要件具備証明書の翻訳、トゥイの偉い親戚たちへの結婚しようと考えている旨の報告を終え、一先ずベンチェでの用事は終了しホーチミンへ帰るだけとなった。


 小さなお子さんを持っている親なら分かると思うが、子供の希望を時には叶えてやりたいと思うもの。実は4歳のタムちゃんは動物園に行ったことがなく、以前から動物園に一度行ってみたいと希望していたのである。


 夢を自在に叶えるドラえもんではないけれど、日本人男性の私とトゥイはタムちゃんの細やかな動物園に行きたい希望を叶えたい。そのためにタムちゃんを幼稚園がお休みの土日を利用し、ホーチミンへ連れていくことにした。


 トゥイがバイクを運転し、私は一番後部座席に乗る。タムちゃんはトゥイと私でサンドイッチのように挟む形で乗ってもらい、ベンチェからホーチミンへの小旅行は始まった。


 タムちゃんもバイクに乗っているということもあり、安全運転でホーチミンへ向かったのだけれど、バイクに長時間座っているとお尻が痛くなるらしく、タムちゃんはお尻が痛くなると「お尻、痛い、痛い」と騒ぎだすのである。


 最初はどこか安全なところでバイクを停車させて、タムちゃんを立たせたりしていたのだけれど、そのうちタムちゃんのお尻が痛くなると、トゥイが運転中、私はタムちゃんを両手で持ち上げ、お尻の位置をずらしたりした。


 するとお尻の痛さが軽減されるらしく、道中、何度もタムちゃんを両手で持ちあがることになった。タムちゃんもお尻が痛くなると足をバタバタ動かし始めるので、私は頃合いを見て両手でタムちゃんを持ち上げる。その繰り返しをしたのである。


 途中、タムちゃんが喉が渇いたと騒ぎ始めたので、バイクを安全なところに停車させて水筒に入れていた氷入りの冷たい水を飲ませた。保冷タイプの水筒はベトナムのお店に売っていて、日本円で80000VND(約400円)で2つ購入しているのだけれど、ベンチェからホーチミン。ホーチミンからベンチェへ長時間バイク移動がある際は重宝している。


 余談ではあるが、水筒はとあるベトナムのチェーン店で購入したのだが、日本のお店以上にサービスが行き届いていた電器店だった。お客が店内に出入りする際、店員がホテルのドアボーイみたいにドアを開け閉めしてくれたりする。


 夜、ホーチミンへ到着したのだが、バイクに乗っていて疲れていたのだろう。タムちゃんはすぐ眠ってしまった。


 次の日、サイゴン動植物園に行く前に、朝、タムちゃんにお粥をトゥイが食べさせようとしたのだけれど、やれ熱いから食べたくない。コショウが入っていて辛いから食べたくないとタムちゃんは文句を言って、なかなか食べてくれなかった。


 しかもタムちゃん用に子供用の歯磨き粉を購入し、歯を磨かせようとしたのだけれど、苦いと言って口に含んだ歯磨き粉を吐きだそうとしたのである。大人だったら問題なくできることが、子供だとハプニングだらけとなる。子育ては日々、格闘なのだなと感じた。


 やっとタムちゃんがお粥を食べ終わり、トゥイの運転するバイクでサイゴン動植物園に行ってきた。


 入園料は一人50000VND(約250円)でタムちゃんは小さい子供だったので無料で入ることができた。サイゴン動植物園の中はとても広く、動物園、植物園、歴史博物館、遊園地、フードコードがある。


 私はお腹を壊していたのもあり、サイゴン動植物園を見て回っている最中、頻繁にトイレに行ったのだけれど、トイレットペーパーはなかったので、くれぐれもサイゴン動植物園に行く際はティッシュを持参することをおすすめしたい。


 サイゴン動植物園内にあるフードコートで食事をしたのだけれど、トゥイ曰く、値段が園内価格だったので、なるべく節約したい方は事前に食べ物を購入してサイゴン動植物園に入るのもいいかもしれない。


 ちなみにサイゴン動植物園は世界で一番古い動物園だと言われている。サイゴン動植物園はかなり広く、日中、ホーチミンの暑い中、歩き回るのは大変である。ミニバスでサイゴン動植物園内を回ってくれる。3人で乗って55000VND(約275円)である。日本人感覚からすると手頃な値段でミニバスに乗れることができるので本当に良かった。


 サイゴン動植物園内には遊園地にある乗り物がたくさんあり、小さな子供から大人まで楽しむことができる。トゥイとタムちゃんはゴーカートに乗ったり、遊園地にある乗り物に乗ったり、無邪気に楽しんでいた。


 本当にサイゴン動植物園の中は広く、4歳の子供の足で歩くのは疲れたのだろう。タムちゃんが「歩くの疲れた。だっこして」と言ってきたので、私はタムちゃんをだっこしたのである。


 こうしてサイゴン動植物園でつかの間の楽しいひと時を過ごすことができた。


 サイゴン動植物園からホーチミンのアパートに帰ってきたのだけれど、心なしかタムちゃんの様子がおかしい。トゥイがタムちゃんのおでこに手を当てると熱い。どうやら発熱してしまったようだ。私とトゥイは心配し、子供用の風邪薬を購入し、タムちゃんに飲ませた。


 タムちゃんはサイゴン動植物園で遊び疲れたのもあるのだろう。すやすやと眠っている。人間の治癒能力は凄く、ぐっすり眠ったタムちゃんは、次の日、ケロリと治ってしまった。タムちゃんは食欲も旺盛で朝から焼き鳥をほうばるのであった。


 そして、タムちゃんの幼稚園が始まるので、トゥイの運転するバイクで今度はホーチミンからベンチェへと向かった。


 ベンチェに着いたタムちゃんはサイゴン動植物園に行ったことをトゥイの母親やおばぁさんに興奮気味で話していた。タムちゃんにとって、楽しい想い出のひとつになれば嬉しい。

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