第5話 日本の冗談はベトナム人には通じない

 私は相手が外国人だろうと日本人に話す感覚で冗談を言ってしまう日本人男性である。もちろん日本と外国の笑いの沸点は違うだろうし、私が冗談だと思って言ったことが、下手をしたら取り返しのつかないことになる場合もある。


 私が面白半分で言ったことが、ベトナム人女性のトゥイにとっては、冗談とは思えない言動に見えたのかもしれない。


 くれぐれも外国人相手に冗談を言う時は、気を付けなければいけない。取り返しのつかない展開になる時だってあるのだから。


 私とトゥイは外国人同士だが、毎日、LINEでメッセージのやり取りをするのが日課になっていた。今後、新興国のベトナムは、昔の日本のように経済発展していく国だと感じている。


 トゥイがどんな人なのだろうと興味があった。トゥイとLINEで食べ物の話になった。


私:ドーナツは好きですか?


トゥイ:わたしもドーナツは好きです。クリームの入ったドーナツ美味しいです。あなたは今日、非常に忙しいですね。


私:私もクリームの入ったドーナツは好きです。学校が終わったので帰宅中です。


トゥイ:あなたは夕食を食べましたか?


私:まだ食べてません。空腹です。


トゥイ:夕食は何を食べますか?


私:家にあるハンバーグを食べます。


トゥイ:あなたの家族は家で料理をしないのですか?


私:家で料理しますよ。今、ハンバーグ食べました。


トゥイ:あなたの料理ですね。


私:いいえ、電子レンジでチン!


トゥイ:あなたは料理の仕方を知っていますか?


私:あまり知りません。私はカップラーメンを作ることができます。


トゥイ:あなたの未来の妻が毎日、あなたのために料理を作りたいと願っています。奥さんは、旦那さんのために料理することを望んでいます。ほとんどの旦那さんは自分で料理はしませんから。あなたはどうなのですか?


私:私は料理はできません。食べる専門です。


トゥイ:料理を本当にしないのですか?


私:料理は簡単なものはやります。

※カップラーメンの写真を送った。


トゥイ:それは料理なのですか?


私:どうでしょう? 私はカレーも作れます。

※レトルトカレーの写真を送った。


トゥイ:誰でもレトルトのカレーは作ることができますよ!


私:はい、そうです。


トゥイ:あなたは妻と子供がいて、妻が出かけていない時、子供に何か食べさせますか?


私:はい、何か食べさせます。


トゥイ:あなたの子供が簡単な食品を食べたくないと言ったらどうしますか?


私:はい、何か作ります。


 ここでトゥイがかなり呆れた様子になった。どうやら私は料理ができないあげく、将来、子供にきちんとした食べ物を与えない男だと思われてしまったようだ。

 

 私は考えた末、こんな発言をした。


私:japan joke(日本の冗談)だよ。


トゥイ:あなたは冗談を言っていたの!


私:私は冗談を言う日本人です。


トゥイ:あなたの冗談は不愉快で楽しくありません!


 どうやらトゥイは私の冗談を楽しんでくれなかったようだ。たしかに冗談なのか何なのか冷静に考えると微妙であった。


 愕然とうなだれる私がいた。すると、トゥイは私を指差して笑い出した。


トゥイ:vietnam joke(ベトナムの冗談)だよ。


私:やられた。


 私の日本の冗談は、あっさりとベトナムの冗談で返り討ちになってしまったのである。


 以降、私は面白い面白くない関係なしに、トゥイに変なことを言ったりするようになった。


 トゥイは変な日本人男性とLINEしていると思っているのかもしれない。


 くれぐれも外国人に冗談を言う時は、気を付けた方がいい。

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