平凡な中二病少年は竜人皇女と結ばれたい ~愛しのあの子のために最強の軍神目指します〜

山田太朗丸

第一章城塞都市トルガルド編

第1話 始まりの物語

「ふっふっふっふっ」


気持ち悪い笑みを浮かべながら歩く少年がいた 時刻は朝の9時 夏という季節を堪能しない少年がいた


「今日は土曜日 新刊は予定通りゲット やはり俺はこのためには生きている 帰ったら早速読もう」


そんな感じで順調にアニメの世界に引き込まれていく少年 黒鉄哲人

ちょうど河川敷の堤防を歩いているとき

とある声が聞こえた


「ぅぐ ぐㇲ・・・ぅぅ・・ェぐ・・・・」


誰かが泣いている・・・たぶん女の子

普段なら無視するだろう 

夏休みに一人漫画を買いに来る小学生だ 友達は極めて少ない

そんな小学生が見知らぬ女の子に話しかけるその難しさは心中察するところ

でも見逃せなかった 理由はわからない

そうして橋の下に降りると・・・なんかローブを身にまというずくまって泣いている子がいた 顔は分からない しかし涙が落ちているのがわかる

さすがにほおっておけない


「あ あの だ、大丈夫、でで、ですか」


緊張で声がこわばる 喉が言うことをきかない これまでの人生 彩華くらいしか同年代に女の子に声をかけた経験にはない


「ふェ? ・・・誰?」


美しい少女だった


 腰まで届きそうな蒼色が混じった銀髪 幼さを感じさせる瞳がすがるようにこちらを見据える、柔らかな面差しには今は幼さが勝るがこれから幾多の人を魅了する美貌の片鱗が芽生えている、ややけだるそうな紫紺の瞳 小さな口 肌は雪のように白く、ローブは白を基調としたシンプルなデザインにも関わらず 逆に少女の魅力を引立てる、このテレビでこれまでみたきたアイドルなど勝負にもならない 体が熱くなるのを感じた ここは冷静に


「え えっと どうしたの なんで泣いてたの?」


思春期前半の少年がこれほどの美貌を持った少女相手に冷静になれというのが無理な注文であった


「ぅぐ そ それが うちに帰れなくなったのじゃ」


その少女の口から言葉が紡がれ身をふるえるような感動が走る

少女の声音は涙で濡れているにも関わらず鼓膜を心地よく叩き 心にを震わせる魅力があった こんな状況でも今この場にある すべてがこの少女を引き立てる添え物に過ぎない 無論己を含めて


「えっと迷子になったの?だったらお母さん探そう きっと見つかるよ」

「うぅ 違うのじゃ」

「え 違うってゆうのは どうゆう・・・」


どうゆうこと? 


 そう言い切る前に目の前の女の子が立ち会がる そして着ていたフードが取れる、その外見は明らかな違和感があった

   


「え 尻尾?角?」


明らかに人間にはみられない特徴だ


「君は・・・誰?なんなの?名前は?」


少女は暫しの逡巡のあと 躊躇うように


「わらわの名は・・・名はフィルというのじゃ おぬしは?」

「黒鉄哲人」

「じゃあ そのうちに来る?」


そういって右手を差し出した

フィルは震えながらも力強く握った


こうして竜人ドラゴンニュート皇女プリンスと軍神となる少年は出会った






とあるぼろいマンションの一室 それが黒鉄哲人の家だった

普通 女の子を連れて帰ったらひどくあわただしくなるだろう

しかし そのマンションの一室は沈黙が支配していた


「ただいま」


「お邪魔します」


「・・・・」


帰宅の挨拶をしても帰ってくるの静寂であった

哲人はフィルを自室に案内した 自室には漫画が散らかっていたがそれ以外の部屋には驚くほど生活感がない


「その 黒鉄哲人・・・殿の両親は?」


「哲人でいいよ 実は僕が両親は小さいころに亡くなったんだ もうほとんど覚えてないけど」


「そ そうなのか 申し訳ないことを聞いたのじゃ」


「いいよ 大丈夫だから」


気まずい沈黙がこの場を包み込んだ


「・・・・・」

「・・・・・」


改めて少女を見つめた

ローブはもう脱いでいる 尻尾と角は良く見える だからといって少女の美しさを寸分も損なうことはなく物語にでてきそうな幻想的な美しさを纏っている 

じっと見つめていると目があった

その瞳には戸惑い 不安 少しの怯えが見て取れた

しばらく見つめあい はっするように目を離す

気まずい・・・お互いに しかも鼓動がはやい そしてなにか話そうとしても考えすぎて何も話せない

黒鉄哲人 これまでの人生でこんなに緊張したことない


「・・・哲人は変な人なのじゃ」


この沈黙に耐えられなったのだろう 少女がこちらを見ながらつぶやいた

その声色には侮蔑や嘲笑は微塵も感じなかったのだが

いきなり変人扱い さすがに心が傷つく

ちょっとへこんでいるとそれを察したのか


「あ その 別に変な意味ではないのじゃ ただその・・・ 」


必死にフォローしているがフォローなっているか極めて怪しい


「哲人はその・・・ わらわを見ても何にも思わないのか?」


戸惑いながらの質問だった その瞳には戸惑いと僅かな期待が宿っている

なにを言えばいいのだろうか この少女がナニかを期待しているのは察することができた

そのナ二かはわからない なら はっきり言うしかない

生唾を飲み込む 一世一代の覚悟を決めた


「とっっっっっっっっっっっっっってもきれいだと思うよ」


天を見上げ哲人は思う

どうだと 言ってやったぞと 哲人はエベレストにでも上ったようなすべてをやり遂げた気持ちになった

見てみろ 普段女の子と会話をしない自分が女の子をを褒めたのだ

さてフィルの反応は? きっと頬を染めモジモジしながら照れているに違いない

そんな反応を期待していた哲人だがさっそく少女の顔を見る


「いや 違うのじゃ その尻尾とか角とかは・・・」


玉砕 粉砕 大失敗 


その答えは違うという反応だった 声も少し冷たい 

ここでアニメばかりみてあまり人と話そうとしないコミュ障の弱いところがでた

夏休みに引きこもりを決めるような少年なのだ 女の子の会話に合わせるという高等テクニックは持ちあせていなかった 


「うおぉぉぉっっっっっ・・・・ 」


地面に伏し己の浅かはさを呪う 

天国から地獄へ 此岸から彼岸へ 哲人の一世一代の覚悟は黒歴史と化した

なぜもっと考えなかったのか

哲人が葛藤にまみれていると

キュゥーーーという可愛い音が鳴る 


「おなか減ったね」


時間は11時 まだ早いが


「腹時計はもう十二時を指している ごはん食べようか じゃあカップ麺でいい?」


「ハラドケイ? カップメン? それはなんなのじゃ?」


「むう 説明するとなると面倒だな 食べて見た方が早いか ちょっと 待ってて」


三分経過

少年が机の右隣に 少女が机の左隣に 肩がくっつきそうな距離だ とても心臓に悪い


「よし できた!」


蓋を上げれば立ち昇る湯気 漂う醤油の香り 食欲を刺激する


「これは・・・ とてもよい匂いなのじゃ!」


フィルは興奮気味だ 初めて見るのだろうか?


「では いただきます!」

「い いただきます?」


とりあえず僕の作法を真似しているフィル

しかし・・・


「む なんじゃこの木の棒 すごく使いづらいのじゃ」


箸は難しいか なら日本人ではないのか? でも話している言葉は間違いなく日本語


「ごめん これなら使える?」


フォークを差し出してみる


「おお!これは使えるのじゃ」


上手にフォ-クを使えている 


「ふぅ〜ふぅ〜 あつっ」


麺類という食べ物になれていないのだろう だが食べ方はとてもきれいだ

明らかに高度な教育を受けているのがわかる


「ふぅ〜ふぅ〜 ハムッ」


舌に合うかだろうか おそらく日本の食べ物にはなじみがないと思う


「おおっ うまいのじゃ!」


良かった なんでだろう? 自分でも驚くぐらいホッとする


「哲人?」

「なに?」

「哲人は食べないのか?」

「へ?あっ」


い いかんさっきからフィルのことばかり見つめていて食べてなかった

・・・ずっとフィルのことを?


「も もちろん 食べるよ! ふぅ〜あちっ」

「ぷぷっ 哲人 慌てすぎじゃぞ」


俺は今 雷に打たれた そう錯覚した


「哲人?どうしたのじゃ?」


だって 今 フィルが笑ったから・・・

元々とっても綺麗な女の子だ 花みたいに可憐な子だ ちょっと大人びているところもある

しかしこうやって笑うとまた可愛い

なんだ? この胸の高鳴りは?

なんでこうもフィルの行動にいちいち俺は鼓動を高鳴らせている?


「て 哲人? だ 大丈夫か?さっきから変ではないか?」


そうやって顔を近づけてくる シミなんか一つもないまさしく雪のような肌だ 紫紺の瞳は大きくちょっと心配そうに覗き込んでいる え?

フィルの顔が俺の近くに?


「・・・ふえっ あ ああ だ 大丈夫!大丈夫だから!」


慌てて顔を離す なんだこれ!

顔から火が出そうだ

耳から溶けそうなくらい熱い!と とにかくカップ麺を早く食べよう

急いで 食べたからだろう 全身が熱い特に顔が耳が 鼓動も早い 急いで熱いものを食べたからだ

でも・・・おかしいなフィルを見ているともっと熱くなる


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「ふーーー美味しかったね」


満腹 満腹 おなかをさする


「美味しかったのじゃ ふふっ」


急に笑い出す フィル


「どうしたの?」

「む いや二人で話しながら食べるというのは良いものじゃな」


笑っているはず なのだがちょっと寂しそうだ


「フィルは一人でよく食べてるの?」

「うむ ちょっとこ・・・父上は忙しいからな」


そうなのか ん?じゃあ


「お母さんは?・・・」


そういうと 笑っていた顔が本当に寂しくなり・・・


「わからないのじゃ・・・」


わからない?お亡くなりに?いやどっちにしろ


「ごめんね つらいことを思い出させた」

「いいのじゃ そうじゃ哲人 この街を案内してほしいのじゃ!」


この街か・・・・このさびれた地方を


「いいけど なんにもないよ」

「いいのじゃ 初めて一人で外に出れてわらわはうれしいのじゃ」


初めて・・・?まぁいいや


「じゃあ そうだな石の博物館にでもいこうかな」

「博物館?」


なにそれって顔だな


「見てみたほうが早いよ いこうか」


さて食後の運動もかねて歩くこと三十分後

さすが夏 めっちゃ暑いな 汗ぐっしょり

しかし フィルは・・・・・


「なんなのじゃ この建物は 大きいのじゃ!」

ローブを羽織っているのに 汗一滴かいてないとは

とはいえここにいたら 焼ける溶ける


「じゃあ 中に入ろうか」

「うむ!」



さて入ったはいい エアコンも効いている フィルも


「涼しいのじゃ!」


お喜びだ しかし


「なんなのじゃ ここは 石しかないの」


そう 石しかない 右をみても石 左を見ても石 

あとはこの街の少ない観光資源 石!

なんか珍しいらしい 昔 大陸とつながっていたとかなんとか

とにかくつまらん


「・・・・・哲人 なんなのじゃ?これは?」


フィルが指を指す 

それは この博物館の目玉

さびれた地方の博物館 しかしながらこの博物館にはそれなりに目玉はあるのだ


「なんか 人間岩とか言われているらしいよ それ」


人間に形が似ている岩 以上


「なんか怖いのじゃ・・・・」

「そうだね・・・・」


ほんとになんだろうこれ

なんでも なんかに削られてこうなったらしい

初めは普通の岩だった・・・はじめは?


「そうえば フィルはこの世界に来た時初めからからあの橋の下にいたの?」

ちょっと気になった


「いいや初めはどこかの家に転移したのじゃ そこからわけもわからず飛び出してきたのじゃ」


「なるほど 場所わかる?」


顎に手をあてちょっと考え込んでいるフィル


「うむ!わかるのじゃ!」


「いってみようか そこ?」


ちょっと 顔がムっってなっている そっぽをむいている


「いやなのじゃ・・・・・」


そんなに帰りたくないのか・・・


「別に帰らなくていいよ ずっとここにいればいいよ 伯父さんは僕が説得してみるよ でも一応知っておきたんだ」


「なんでじゃ?」


「興味があるからかな・・・・」


しばらく考えているフィル そして


「わかったのじゃ・・・」


次の目的地決定


時間は四時 やっぱりまだ暑い・・・

そんなかフィルに案内してもらった場所は・・・・


「ここかい?フィル?」

「そうじゃ わらわはここに転移したのじゃ!」


普通の民家だ 一戸建てのそう普通の 普通の家族が住・む・は・ず・だ・っ・た・家・だ・


「俺んちだ・・・・」


その家は両親が急死し 伯父さんに引き取られ誰もすまなくなってしまった我が家だった


「なんとここは 哲人の家なのか!すごい偶然じゃ」

「なかに 入ろうか・・・・」

「うむ!」


普通の引き戸だ 懐かしいな そうだ あれの手入れをしようか


「フィル いいもの見してあげる」


そういうと 


「なんなのじゃ!たのしみなのじゃ!」


すごくよろこんでいる 

玄関を入って右の和室 両親は和室が好きだった 

その和室の布団入れの中 中の布団を全部出すと隠し扉がある

その扉をあけると 小物入れがある 中を開けると


「これこれ 綺麗でしょ この石」


エメラルドグリーンに輝く綺麗な石がある


「すごいでしょ この石 フィル」


きっと すごいのじゃ 綺麗なのじゃと言ってくれる思っていた 

しかし 


「・・・・・・・なんでそれがあるのじゃ」


返ってきたのは別の答えだった


「哲人 それがなにが知っておるのか?」

「え いや石じゃないの?」


フィルはしばらく考え込むと こちらの目を見て真剣な瞳で訪ねてきた


「その石を本当に知らんのじゃな?」


目がちょっと怖い


「うん・・・・」


再び俯き考えるフィル

そして絞り出すように言葉を発す


「その石は・・・・転移の魔法が込められておるのじゃ」

「転移?それはどういうこと?」

「簡単に言えばその石を使えばわらわは帰れるのじゃ・・・故郷に」


それは どうこたえるべきだろうか・・・


「フィルは帰りたいの?」


問う 問わなければならない 


「わらわは今日がこれまでの人生で一番楽しかったのじゃ とてもたのしいのじゃ 普段はこんなに外に出られないのじゃ 高い高い塀と空の雲を見上げるだけじゃ しかも皆がわらわを特別扱い まるで宝石を扱うようなのじゃ・・・・」


再び言葉を発す そして涙を浮かべ


「ちがうっ ちがうのじゃ!わらわは人間なのじゃ!わらわは神龍などではない!」


小さい声で絞り出すように これまで言えなかったことを吐き出すように話す


「わらわは・・・・人間なのじゃ・・・・」


つらいのだろうな この小さな肩に明らかに年不相応のものが乗っているのは哲人でも理解できた

再び真剣に涙を浮かべた目でこちらをのぞき込み


「しかし・・・しかしな 哲人 わらわはな こう思ってしまうのじゃ

それでも 帰らなければならない 帰りたいとな」

その表情はどうすればいいかわからないといった顔だった

「今すぐに 決める必要はないんじゃないの・・・別にもう少し居ても・・・」


フィルは首を横に振り

「この石に刻まれた転移魔法の術式に劣化が始まっているのじゃ なんという不幸なのじゃ

 おそらく安全に転移できる期限が今日なのじゃ 今日しかないのじゃ しかもこれ一人用じゃ転移できるのは一人だけなのじゃ」


なんということだろうか なんという残酷な運命だろうか


「そ・・・そんな そんなことって・・・・」

頭を抱える どうすればいいのか・・・

「哲人はどうしたいのじゃ?わらわと一緒にいたいのか?」


フィルが問いかけてくる どうしたい


「それは その・・・・・」


一緒に居たい 離れたくない そう思ってしまう そう考えてしまう なんでだ会ったのは今日だ

会って数時間 しかも何をしたか 一緒にカップ麺を食べてつまらない博物館にいっただけだ

だからこそ もっと一緒にいたい もっと一緒にもっとおいしいものを食べたい もっといろんな場所にいきたい そう考えてしまう 想像してしまう それらはきっと幸せだろうと

しかし


「ぼ ぼくは フィルと一緒に居たいよ けど」

「そ そうなのか な ならば」

「けど フィルは帰るべきだよ・・・・・・」


その瞬間 フィルの顔がクシャツと歪み


「なんでじゃ・・・・ 引き留めてくれぬのか・・ ずっと一緒にいようといってくれないのか」


心が痛い 体じゃない 心が痛い これまでのどんな痛みよりも痛い

張り裂けそうだ


「引き留めたい ずっと一緒にいようと言いたい」

「な ならば・・・」

「けど フィルは帰りたいと言った・・・・そうするべきだ」


哲人は子供だ 力がないのだ この世界にこの少女を留めておく決断はどうしてもできなかった

涙が溢れる それはフィルも同じだ


「・・・・もう二度と会えないのじゃぞ きっともうないのじゃ」

「うん なんでだろうね それが死ぬより怖い ものすごく怖い だから・・・」

「だから?」

「約束しようフィル」

「約束?」


これまでの人生で決意宿した瞳で フィルの両手を包み込むようにつかみ


「そう約束 次は僕が迎えに行く今度はけっして離さない決して ずっと一緒にいようフィル」


絶対に守る 絶対に違えぬ そしてこの少女の隣に立つと密かに誓う


「・・・・信じるぞ その言葉 どんな方法か知らぬが 来てくれるのじゃな」

「もちろんだよ フィル」

「ならば・・・・行動で示すのじゃ」

そういって目をつむり 顔を若干上にあげる

え これって・・・・まじか

「えっと その・・・」

「む 乙女に恥をかかせる気か?」

「いや けどね」


戸惑う 


「むぅ~~~哲人はそ その あ あれか き 嫌いか?わらわのこと」


フィルも照れている


「そ そんなわけないじゃん 好きでもない相手にあんな無責任なこと言えないよ」

「そ そうか うれしいのじゃ わ わらわも哲人のことがす す す すきなのじゃ」


両想い 知ってたけどね


「そ そうかなら問題ないね 両想いだからね」

「そうなのじゃな で ではゆくぞ」

「う うん・・・」


恥ずかしすぎるので 互いに目をつむり 軽くつける程度で

数秒の出来事が数時間におもえた・・・おそらく世界で一番ながい数秒


「や 約束は守るのじゃぞ 哲人」


互いに真っ赤な顔で


「も もちろんだよ」


目を合わせなれない


「うむ ではわらわは帰るとするのじゃ」


ちょっと冷静になる


「そうだね・・・フィル」

「なんじゃ?」


とてつもなく真面目な声で背伸びをしてこんなことをいってみる


「愛してる」


また 互いに茹蛸のように赤くなる


「わらわも・・・いやこの言葉は次会う時までとっておくのじゃ」

「うん その言葉が聞けるように頑張るよ」

「うむ ではな・・・・・」


石が光りだしフィルの足元に幾何学模様の魔法陣が出現する


「哲人・・・・・・また会うのじゃ!」


その言葉を最後にこの世界に迷い込んだ竜人少女は帰還した

そして少年の心に沸いた感情は 安堵でもなく まして喜びでもなく


「畜生・・・・」


圧倒的後悔だった



「引き留めたかった・・・・ けど 約束したんだ」


そうまた会うと 隣に立つと


「頑張るよ・・・」


拳を胸に当て誓う 絶対に成すと 成してみせると

そうして 少年の運命の歯車が動き出す


これが竜人少女と軍神となる少年の出会いであった

ちなみにこの二度世界を渡った影響でフィルが転移魔法を獲得

城の外に出まくりお転婆皇女と呼ばれ 帝国民から愛されることとなる

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