第八章十一節 命懸

「何だ、動かん……!?」


 透明化したAsrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアに、両肩をがっちりと抑え込まれる。さしものDragnaughtドラグノートも、振りほどくのに手間取っていた。


「閣下、見えない何かがDragnaughtドラグノートに取り付いています!」

「振りほどくか……くっ、しぶとい!」


 凄まじい膂力と握力、そしてノートレイアの執念でもって、Asrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアは時間を稼ぎ続ける。


(そろそろか……!?)


 やがて、最後の一人がグライス家の屋敷に突入する。

 それを見たノートレイアは、すぐさまDragnaughtドラグノートから手を放し、距離を取った。


「さぁ、まだまだ遊んでもらうよぉ!」


 つかと小盾を抜き放ち、再び剣と盾を形成する。


「小賢しい……!」


 フローラが毒づくが、Asrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアの姿はいまだ捉えられていない。

 そしてAsrifelアズリフェル・_ViolettiaヴィオレティアAsrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアで、ちまちまとした攻撃を仕掛けていたのであった。


 だが、ノートレイアもノートレイアで、決定打を仕掛けられなかった。


(しぶといねぇ……。大隊規模で一斉に光弾を浴びせても、ほとんど通じちゃいない。おまけにあの膂力……。認めたくはないけど、Asrionアズリオンを彷彿とさせるねぇ。けど、今回は時間稼ぎが目的。紫焔騎士団を守り抜いて、神殿騎士団員の務めを果たすかねぇ)


 2個大隊を壊滅させた圧倒的な性能は、伊達ではない。万一通じなかったら――ノートレイアをして、そう思わせる相手だ。

 迂闊に手の内を見せられないノートレイアは、結果としてあまり積極的な攻勢に出られなかったのである。


(ったく……ここまで命懸けな戦いも久々だよ。Asrifelアズリフェルが頑強な装甲を持ってるって知ってても、安心できやしない。グライス家……厄介な魔導騎士ベルムバンツェだよ、もう!)




 透明化状態を解かないまま、ノートレイアは時間稼ぎを続けていた……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る