第186話 『その日、説得された』

 その後、2人のお母様とナンバーズ3人を同時にお説教をした後、エイゼル達に事情聴取をする。命令だったとしても、間違った行動を諌めるのが臣下というものだ。逆らったからと言って逆上され、手打ちにされるような狭量な上司ではないんだし、言うべきところはきちんと言ってもらわないと。

 案の定、王妃3人による突撃は今朝の時点で連絡が来ていたらしい。なら、どう転ぶかも予測して私に報告&相談するのが筋というものでしょう。

 という訳で、最速で反省して謝ったリーシャ母様以外は、ナンバーズ含め全員部屋の隅で正座してもらう。王妃に正座はやり過ぎかなとも思ったけど、割と素直に正座してくれた。

 思っていたよりも私からのお説教が効いたのかしら?


 そして、少し遅れてしまったけれど進級組への授業が開始された。まずはモリスン先生、そしてイシュミール先生だ。

 彼らの理解は早く、説明をするまでもなく私の魔力を元に自身の『魔力溜まり』を見つけ出し、手足の様に魔力を操作し始めた。

 これほど素早く実践出来たのは、事前に編入組の授業を見ていただけではない。Sクラスの担任を任されるだけあって、2人とも優秀な人なのね。

 この理解速度、イシュミール先生も凄いけどモリスン先生はもっと凄い。私が魔力を流してからたった5分ほどで、無詠唱の『ファイアーボール』を生み出して見せた。


「おお! モリスンの小僧がいとも容易く無詠唱を!」

「モリスン先生って凄かったんですね」

「これでも教師だからな。だが、それよりも凄いのはお前の知識と技術だ。まさかこの様な方法で魔法の練度を上げられるとは思いもしなかったぞ」

「シラユキ殿、どうかワシにもその技術を……!」

「良いですよ。ただソシエンテ教授の波長は正確に掴んでいませんので、イシュミール先生が終わってからにしますね」

「おお……!」


 嬉しすぎるのか、涙を浮かべながら頭を下げてきた。感謝されるのは悪くないけど、ここまで喜ばれると困っちゃうなー。


 そうしてイシュミール先生も無事マスターしたところで、教授の番。彼は頭が非常に良く、なおかつ柔らかいようで、今日私が他の子達に教えていた内容を全て飲み込み、自分の知識へと還元していた様だった。その為『魔力溜まり』を認識させた途端思うがままに操作を始め、モリスン先生以上の速度でマスターして見せた。


「す、素晴らしい……。これが『魔力溜まり』! 今まで以上に魔力を取り出せる! やはりあの定説は間違っていなかったのだ! おお、シラユキ殿。感謝しますぞ! これでワシは、魔道の奥へと進むことが出来る! なんとお礼をすれば良いか……」

「どういたしまして。そうね、お礼をしたいというなら、沢山の人たちに魔法の使い方を広める手伝いをして欲しいわ」

「お安い御用ですぞ! しかし、この力を教えていくには、他者の体でも精密に魔力操作が出来る腕前と、相手の魔力を感じ取れる感受性が必要ですな」

「前者は練習あるのみだけど、後者はとある職業の力があれば解決するわ」

「ほほう、それはどの様な?」


 教授は新しい知識に目を輝かせた。

 ふふ、本当に子供みたいね。


「その話は後で。今は他の子達を見てあげないと。モリスン先生達は3人で輪になって、互いの体に魔力を流し合って、上手に操作する術を覚えて下さい。ただ、最初は少しずつゆっくりとして下さいね。流しすぎて制御を失った魔力が止まると、相手に魔力酔いを与えてしまうので」

「心得ましたぞ! さあイシュミール君、早速始めようではないか」

「はい、教授~」

「おいジジイ、イシュミール先生の変なところに触れたらぶっ飛ばすからな」


 言い合いながらもちゃんと練習を始める先生達を置いて、私は進級組へと振り返った。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ありがとうございますシラユキさん! こんな風に魔法が使える様になるなんて、思いもしませんでした!」

「おお……、感謝するシラユキ。これで俺はまた一歩、夢に近付けた」

「おおー、出来た。こんなに負担なく魔法が使えるなんて、驚き。いや、感動した? ごめん、うまく言葉に出来ない」


 彼ら彼女らが、三者三様に感謝の言葉を並べる。今終わった子でようやく半分といったところかしら。

 長年にわたって染み付いた誤った知識に加え、先生や教授に比べて低いスキルの影響か、魔力を認識させるのに苦労したわ。その為1人1人にかける時間は相対的に長くなり、疲労具合も高い。

 こういう時息抜きも兼ねてセクハラ……もとい、身体に触って反応と合わせて堪能するんだけど、順番に見ていくから並ぶ様伝えたら、男の子達が前に。女の子達は後ろの方に行ってしまったのよね。

 これはまあ仕方がないと言えば仕方がない。男尊女卑というか、女の子は、出しゃばってはならないという空気感が強い中で育ってきたんだもの。

 本当は教えて欲しいんだけど、皆遠慮がちみたい。


 ただ、テトラちゃんはそういうのをまるで気にせずに前の方にいたけど。なんなら、道を開けられて出てきた王子2人の真後ろを陣取るぐらいには堂々としていた。

 けどテトラちゃんは他国の子だ。価値観は違うだろうし、何より彼女の立場から考えれば、テトラちゃんはソフィー達と同じように高い実力を持ち合わせる事で『選ぶ側』に立とうとしている人間だ。


 本来は他の子もそれくらいの気概でいて欲しいところだけど、難しいわね。……その辺りも今後の課題だわ。お互いに選んで選ばれるくらい平等な世界にして行きたいところね。

 男女の比率はどうしようもないけど。


 ……いや、アレが出来ればそれも整うのかな??


 とにかく、男の子ばかりを相手していて非常に疲れたわ。

 収穫としてはテトラちゃんの身体が、意外と引き締まっていたことくらいね。抱き上げた時は女の子の身体だなーと思ったけど、直接触れるとまた違った感想が出るのね。


「残りは貴女達だけど、ごめん。疲れたからちょっと休憩させて」

「シラユキ様、どうか無理はされませんよう」

「私達は後日でも構いません」

「ゆっくりと休んでください」


 ……良い子達すぎる。こんな子達だからこそ報われなきゃいけないわ。


「ダメよ、貴女達は今日教えるって決めたんだから。ちょっと待ってなさい、すぐ戻るから」


 そうして私の憩いの元であるアリシアのところへ。アリシアは生徒達からの質問攻めを終え、1人1人の様子を見て回っているようだった。


「アリシアー」

「お嬢様? ……お疲れの様ですね」


 すぐに察したアリシアに連れられ、演習場の端っこで膝枕をしてもらう。


「えへへ」

「頑張りましたね、お嬢様」

「まだ残ってるけどね」

「差し支えなければ、代わりましょうか?」

「ううん、私が見てあげるって約束したんだもの。反故にしたくないわ」

「ご立派です、お嬢様」

「えへ、撫でてー」

「はい」


 ここが演習場で、すぐ近くでクラスの子達が魔法の練習をしていることを忘れてしまいそう。

 私はであることを忘れて、アリシアに甘えまくった。えへへ、幸せすぎて眠っちゃいそう。


「あふ……」


 欠伸が出ちゃった。


「お休みなさいますか?」

「んぅ……起きてる」

「さようですか。では、私が教えていた子達の様子をお伝えしますね」

「ん……」


 アリシアに聞く限り、魔法の会得は問題ないみたい。2個目ということもあって、1つ目の実践を参考にすることでスキル3までそこまで時間はかからないだろうとのこと。私がストックしておいた魔法書もそれぞれの子たちに配り終えているみたいだし、大丈夫そう。

 ただ、今回第二属性として神聖魔法を選択したココナちゃんだけは苦労しているみたい。村にあったのは教会ではなく神社だったみたいで、教会には他文化ということもあり今まで一度も足を運んだことがない様だった。

 神社と教会では発せられる神聖さというか魔力の空気感は毛色が異なる。崇めている信仰対象も違えば、用いる魔法も別物だ。そんな彼女に、いきなり神聖魔法はハードルが高かったわね。シラユキちゃん反省。


 そんなココナちゃんに、お休みに教会に行ってみてはと伝えたらしい。確かにイングリッドちゃんなら快く受け入れてくれそう。子供が好きみたいだし、獣人に対しての差別もしていない。

 ああ、休みで思い出したけど、シラユキちゃんもやることがみっちり詰まってるなぁ。『紡ぎ手』連中の指導もそうだし、アイテム作成や教育者の育成、レオン君の報告もそろそろ来るし、そういえば神丸ともあれから話してないや。


 ……よし、善は急げね。

 お昼ご飯を食べたらそのまま直帰しちゃおう! 選択授業は調合を選択して、水魔法をモノにしたこの子達に全部任せて、私は堂々とさぼるわ!



◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後、王妃様達を許してあげて、進級組の女の子達に魔法を教える様子を見学することを許した。

 ついでにナンバーズも強化しておこうと思っていたので、今回はツヴァイを見てあげることにした。まとめて面倒を見てあげたほうが手間が少なくて楽なんだけど、この後予定があるからエイゼルとドライにはお使いを頼んでおいた。


 見てあげる順番も、当然生徒達が最優先。王妃様達は後回しだ。

 そう宣言した時、彼女達は案の定遠慮していたけど、言いくるめた。


 そうしてボディータッチ多め……というか、いけそうな雰囲気なら後ろからハグしたりなんかもして、ゆっくりじっくりと『魔力溜まり』を教えて行く。

 皆柔らかいし、良い匂いだし、反応も初々しくて新鮮だしで、癒されるなぁ。まあ流石に、クラスメイトで何回かお話ししたくらいの仲だから、いきなりキスしたりはしないけど、ハグ程度で嫌がる子はいなくて満喫出来たわ。


 はぁ、これから教えられる人が増えていくとこんな風に私の手で教えられる子の割合はどんどん減っていってしまうのね。この作業は大変だし、全員に行おうとすれば年単位で掛かっちゃうから仕方のないことではあるけど、訓練を口実にお触り出来なくなるのは少し憂鬱だわ。

 ……うん? でも仲良くしてくれてる子なら嫌がられるなんて滅多にないんだし、お触り出来なくなることは無いかも?


 ともかく、この先どれだけ沢山の人が教えられる様になったとしても、カワイイ子は私が優先的に教えていこう。とりあえず今、私のファンクラブに入ってる子達なんかは、直々に教えてあげようかな。

 ファンクラブに入っているってことは、だろうしね。


「シラユキ様……で、出来ましたわ」

「シラユキ様に直接教えて頂けるなんて、んふっ。感謝の言葉も、ありません」

「シラユキ様の魔力、とっても気持ち良い……」


 頬を紅潮させ、肩で息をして体をくねらせる若い女の子達。……うん、ちょっと少しやりすぎちゃったかもしれない。そういえばポルトでも、助けた女の子たちの腰を砕いたこともあったっけ。

 箱入りのお嬢様たちには刺激が強すぎたかも。


 ま、まあ彼女達と事を始める前に『アースウォール』で小さな壁を作っておいたから、男子達の目に晒されることは無かったし、魔法も使える様になったから……オッケーね!


「じゃあ次、ツヴァイいらっしゃい」

「はっ」


 そう言ってツヴァイは、目の前でごろんと横たわり、装束をまくってお腹を出してきた。楽な姿勢の方が理解しやすいとは伝えているけど、初手で寝転がっておへそを出す子は初めてね。


「いくら楽な格好でと言っても、お腹まで出す必要はないわよ?」

「いえ、この装束は魔力を通しづらい素材で編まれた物なので……。それにこれは、シラユキ様になら何をされても構いませんという意思表示でもありますから」

「そうなんだ?」


 無防備に剥き出しにされたお腹を撫で回しながら反応を伺う。ふふ、くすぐったそう。


「さっきの件、反省してる?」

「……はい」

「ナンバーズはさ、確かに陛下の直属の部下ではあるけど」

「んっ」

「そんな陛下がさ、貴方達3人に関して全権はくれなかったけど、ツヴァイに関しては私の自由にして良いって言ったわ。覚えてる?」

「覚えております」

「なら……分かるでしょ?」


 私の自由にしても良いとしても、所属はそのまま変わらずであるとも伝えられているが、そこには触れない。ツヴァイもそこは理解しているだろうけど……。

 ちょっとグレーな部分だし、お互い触れない様にする。


「……申し訳ありません」

「理解してくれてるなら良いわ。次から気をつけてね」

「はい、シラユキ様」


 そのままツヴァイに魔力を浸透させ、認識と操作を教える。そして彼女は、魔法に関して扱いが格段に向上した事を理解した。

 起き上がったツヴァイにこっそりと耳打ちする。


「ツヴァイ、風のスキルはいくつ?」

「……風が使えると、お伝えしたことがありましたでしょうか?」

「ないけど、情報伝達において風の魔法はほぼ必修だと思うから」

「なるほど。私のスキルは……ごにょ」

「おおー。凄いのね」


 ソフィーに次ぐレベルじゃない。


「それだけあるなら、移動に活用する方法があるわ。……ごにょごにょにょ」

「その様な方法が!?」

「でもぶっつけ本番は危ないから、ちゃんと練習するのよ」

「はいっ。活用してみせます」


 目を輝かせ敬礼するツヴァイを撫でていると姦しい会話が聞こえてきた。


「何の話をしているのかしら?」

「気になるわね~。あとで教えてもらおうかしら」

「い、いけません。また怒られてしまいます」

「そうね、正座はもう勘弁ね……」

「残念ね~。はぁ、足が痺れて辛いわ~。リーシャちゃん、治してくれない?」

「ごめんなさいシルヴィア様、シラユキちゃんの許可が降りていないので……」


 順番待ちをしているママ達だった。


 ……ふむ。

 ちゃんと仲が良いのね。史実だとリーシャママが亡くなってからは争いがあったとかで、それが子供達や派閥なんかに影響を与えて泥沼化していたと記述があった気がしたけど、元々の関係まで悪かったわけではないのね。

 安心したわ。


「ママ達お待たせ」

「待ってました!」

「待っていたわ~」


 スカーレットママとシルヴィアママが目を輝かせた。本当に待っていたみたいね。

 リーシャママは逆に怒られないかとあわあわしている。


 リーシャママは真っ先に謝ってくれたから許したけど、逆に怒らなかった事で罪悪感増してるのかも。第三王妃だし、2人ほど図太くないのかもしれないわね。


「期待しているところ悪いけど、今から教えるなんて一度も言ってないわよ?」

「「ええええ!?」」

「……そうですよね」


 スカーレットママとシルヴィアママは仰天してるけど、逆にリーシャママはさっき謝った反動か、何処か納得している様子だった。

 うーん、そうだなぁ。私は何も、いじわるするためにこんなことをしているわけではない。教えるのを渋るのにも、それなりの理由があるのだ。

 仕方がない。とりあえずコレを聞いてからを決めよう。


「……はぁ、分かったわよ」

「「「え?」」」

「話だけでも聞いてあげる」

「「「話?」」」

「突然魔法を教えて欲しくなった理由を教えてくれる? それで判断するわ。……私だって、ママ達に教えるつもりはあったわよ? でもその優先度は低かったわ。理由は勿論、今すぐにその力を必要としているかどうかで判断しているの」


 学生達は今後の未来を担う人材だし、ダンジョンを利用出来るから成長の機会も多い。次に必要なのは騎士団や魔法師団、初等部、あとは冒険者や盗賊ギルドもそうね。その辺りを満遍なく見て行くつもりだった。


「仲間はずれにするつもりは無いけれど、ママ達が今すぐ魔法を使える様になる必要を感じなかった。だから教えて? 何が原因でママ達は魔法を使える様になりたかったのかしら」


 ここで私を納得させられる理由を伝えてくれるなら、私はきちんと教えるし、大した理由でないのなら、文字通り後回しにする。

 もしもここで大層な理由でもないのに魔法を教えでもしたら、今後お偉いさん達がこぞって伝授してほしいと押し寄せてくるかもしれない。

 勿論そう言うのが来ても跳ね除けるけど、面倒じゃない? いちいちそんなのを相手するのは。疲れるし、そんな日々が続けば私のやる気も削がれる。

 だから、あまり前例は作りたく無いのよね。


「リーシャママも2人を差し置いて教えられるのは乗り気じゃ無い様子だし、結果次第では3人まとめて後日対応にしてあげる」

「スカー姉様……」


 リーシャママが姉の様子を伺う。スカーレットママは皆と顔を見合わせ頷き合い、口を開いた。


「ごめんなさい、シラユキちゃん。今日は迷惑を掛けてしまったわ」

「そういうのはいいから、理由を教えて? どんな内容でもから」

「うぅ……」


 一応3人ともママになったばかりだし、1度のミスで限界まで下がったりはしない。数日前にママになった段階で、3人のことはそれなりに好きになっているのだ。

 なんなら、今の段階でもその辺の子達よりかは好きまである。ここから私に嫌われるなんて、相応のことを仕出かしてくれないと起こり得ない。


 例えば……私の家族を酷い目に合わせるとか? あ、ちょっと考えただけでイラっとした。

 うん、なしなし。妄想で怒ってちゃダメよ。


 ちょっと怒気が漏れたことでママ達が萎縮していたが、そこまで気が回らなかった。


「わ、私事なんだけど」

「うんうん」

「シラユキちゃんが語ってくれた例のオーブが、昨日届いたでしょう?」

「届けたわねー」

「先日シラユキちゃんが報告してくれた後の事なんだけど、あのアイテムが完成したらヨーゼフがザナックを連れてダンジョンに入るって言っていたの」

「あー」


 容易に想像がつく。ザナックさんも大変だなぁ。


「それで私達も……ヨーゼフの力になってあげたくて」

「……それで魔法を習おうと?」

「一昨日の話ではまだまだ時間がかかりそうだったからゆっくりお願いしようとしていたんだけど、たった1日で届いちゃったから……」

「慌ててやって来たと」


 リーシャママやシルヴィアママを見ると、肯定するように頷いた。『血』の事も考えると、王妃になるくらいだから武芸や魔法に優れていてもおかしく無い。それに陛下には護衛が必要なのは確かだ。

 ううん、まさか私が原因でママ達を急かさせてしまったとは。しかも私事とか言ってるけど、それって陛下のことが大事だから力になってあげたいってことでしょ? それってつまり愛。全然どうでも良くなんてないわ。むしろ大事にされるべきよ。それを後回しにしてしまうなんてナンセンスだわ、あり得ない!


「ママ達の思い、受け取ったわ! 残り時間は短いけど、みっちり魔法を詰め込んであげる! ついて来なさい!」


 私がどの手順で教えて行くか頭の内でトレースしている側で、ママ達は身を寄せ合っていた。


「許された……みたいですね?」

「シラユキちゃん、思っていた通りの子だったわね」

「あら~、案外あっさり……」

「良いのでしょうか……」

「いいじゃない、嘘は言ってないんだから」

「それもそうね~」


 陛下の事を守りたい。その想いに、確かに嘘はなかった。

 しかし、彼女達の心の奥底に潜む、王宮生活で積もりに積もったフラストレーションを発散させるため、魔法で派手に暴れたいという根底にある想いまで、その時の私は見抜けなかったのだった。


『ふふ、マスターは家族愛に弱いからね』

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