The ARK ~ジウスドラの船~

John B. Rabitan

「このまばゆい光は何じゃ!」

 思わずジウスドラは、叫びを発していた。そして自分はもう老人だというのに、年甲斐もなくとてつもない恐怖におびえた。

 ――地球が危うし。人類が危うきなり。

 彼の足は、地を踏んでいない。だが、空中に浮かんでいるという浮遊感覚もなく、ただ暗黒の中に漂っていた、先程までは。だが、先程といっても時間の流れという感覚さえ喪失しているように思えてならない。

 果たしてここはどこなのか、あるいはどこでもないかもしれない。空間さえ存在していない感覚だ。

 そしてそんな時、彼の目の前で閃光が放たれた。それは前方からというより前からも後ろからも上からも下からも右からも左からも、同時に発せられる。そして彼を包む。

 最初は一瞬恐怖を感じたが、その光の暖かさに、いつしか彼の心は安らぎを覚え、またとてつもない懐かしさを感じて自然と涙があふれてくるのだった。何か大いなる存在のふところに包まれて、ぬくもりを与えられている。

 光の中に声があった。それは耳に聞こえる声ではなく、心に、いや、魂に直接響いてくる声だった。


 ――吾、すべての肉身もちたる人をば絶やさん。暴虐世に満つればなり。このままにては、神の大経綸おほはかり進むるも難しきよ。幾億万年にわたれる闇の世、夜の世の夜明け告げん国祖三千年の仕組みも始まるなり。されば吾、神より離れし人々を、大掃除の仕組み致さねばならぬわけあるなり。やがて地のに肉身持ちたるもの、大いなる水の洗礼、大洗濯ジャブジャブと致さざるを得ざりし天の時至れるなり。されど、世に神を求めし真人まびと神縁かみゆかり濃きものも少なからずよ。汝、神の言霊の伝え人となりて、それらをメザメさせ、救いのミチに入れしめんこと、神への第一の義にして汝のいさおしとならん。細かきことはおいおい知らしめゆくなれば、汝真ス直になりて神の言葉のままになさんこと肝要なり。


 ジウスドラは戦慄的内容のその声を、何度も胸の中で反芻させた。だが落ち着いて、ス直にそれが聞けるジウスドラだった。

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