第365話 これが極致です!!

「ぬふふ……エデンはここにあったのです!

 ふっ、僕達探究者が遥かなる太古の昔から追い求めていた理想郷を僕は遂に発見してしまった様ですね……」


 人間の歴史のみならず、神の歴史にすら名を刻む素晴らしく、偉大な偉業!

 しかし、当然達成感はありますが、今となっては哀しさの方が大きいです。

 これが極致を極めてしまった者の業と言うものですか……


「何をやっておるのだお主は……」


 むむ! 楽園にて感傷に浸っている僕を邪魔するのは一体誰ですか?

 このエデンに土足で踏み入るなど笑止千万! ふふふ、ならず者には門番による戒めが降る事でしょう!!


「ふっふっふ! さぁ、我が楽園に侵入せし無謀な者よ!

 この極致に足を踏み入れた洗礼を受けるが良い!!」


「ぬぉ!? 何をするっ!!」


 ふっ、どうやら門番に呑み込まれた様ですね。

 それは一度呑みこまれてしまえば脱出する事は殆ど不可能なまさしく牢獄! 底無しの迷宮なのですっ!!


「ええい! やめんかっ!」


「っ!?」


 馬鹿なっ!! エデンの洗礼が打ち破られた!?

 侵入者を呑み込んでいた赤いもの……子猫サイズのモフモフ霊鳥フォームになったフェルが宙に舞い……


「ん」


 フワリと僕の頭に着地した。

 仕事をやり切った感を醸し出して、撫でろと言わんばかりに擦り寄ってくるフェル……可愛いっ!!

 もう! 撫で回しちゃいます! ぐへへ、モフモフです!!

 ここはモフモフのモフモフによるモフモフの為のエデンっ!!


「はっ!?」


 危なかったです。

 もうちょっとでモフモフに持って行かれるところでした。

 しかし……この楽園の洗礼、モフモフ突撃をこうも容易く退けるなんて。

 侵入者の正体は一体……


「お主な……」


「あれ? ネルヴィア様?

 そんな所で何してるんですか?」


 どうやら侵入者はネルヴィア様だったようですね。

 強制的に対象者をモフモフのユートピアへと誘う洗礼を容易に退けて見せるとは!

 何やら呆れた様な顔でこっちを見ていますけど……流石はネルヴィア様、神王の名は伊達じゃないって事ですね。


「それはこっちのセリフだ!

 お主こそ、ここで何をしておるのじゃ?」


「ふっ、よくぞ聞いてくれました!

 とくとご覧あれ! これこそが惰眠の究極を追い求める探求者として僕が辿り着いた極致!!

 その名も……モフモフの楽園ですっ!!」


 決まった……ネルヴィア様なんて感動の余り声も出ない様ですね。

 とは言え、いくら神王たるネルヴィア様だとしてもそれは仕方ありません。


 なにせ! この場所にはサイズを自由に調整できる霊鳥フェルに、白き尻尾と耳が揺れるノアとシアの白狐姉妹とフェンリル達!

 そして、今日はこのいつものメンバーに加えてアヴァリスまでいるのですから!!


「ふ〜ふっふっふ! そして僕はモフモフな皆んなに包まれて惰眠を貪るのですっ!!」


 これこそが楽園にして至極! これこそがモフモフですっ!!


「そ、そうか……うむ、そうじゃな?」


 どうやらネルヴィア様にもこの楽園の素晴らしさを分かってもらえた様ですね。

 今度一緒に皆んなをモフモフするとしましょう!


「それで、ネルヴィア様は何を?」


「う、うむ、妾はお主達を呼びに来たのじゃ。

 突入組の選抜および準備が整った……ヴィスデロビアを討ちに行くぞ!!」

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