第349話 戦闘狂
ピシッ!
コレールの手で掴まれた漆黒の刀の刃に亀裂が走り……砕け散る。
砕けた刀身が地面へと落下し、空気へと溶けるように消滅した時にはコレールとジバルの側には女の姿は既に無く。
瞬時に距離を取った美女とコレール達は、十数メートル程を開けて対峙する。
「ジバル殿、大丈夫ですか?」
「ええ、おかげさまで。
しかし、何故貴方がここに? 後方で全体指揮を取っていたのでは無いのですか?」
「なに、私も少し暴れたいと思いまして」
当然の様に女の攻撃を受け止め、それだけに留まらず漆黒の刀剣を握り砕いた事実に苦笑いを浮かべるジバルに対し、コレールが獰猛な笑みを浮かべてみせる。
コレールの黄金の瞳がをスゥっと細められ、その鋭い視線が敵を射抜く。
人間なんて一瞬で死に至らせる様な威圧が向けられる中、その圧を一身に受ける美女はそんな威圧をモノともせずに微笑みを浮かべる。
「ふふふ、始めまして。
私の名はカエデ、ヴィスデロビア様が魔皇神・序列5位です、以後宜しゅう」
優しげな微笑みを浮かべながら、戦意と狂気に満ちた目で嗤うカエデからコレールに勝るとも劣らない殺意が迸る。
「貴女は確か、先程の黒雷を降らせた方ですね?
私の名はコレール、お嬢様が眷属の1人にして専属執事長です。
ナイトメアではお嬢様より総司令を仰せつかっております」
「あら、覚えていた頂けたのですね、嬉しゅうございます。
しかし……ふふふ、そうですか、コレール殿ですか……貴方はそこで倒れている方々よりも遥かにお強いとお見受けしますが。
次は貴方が私と遊んで頂けるので?」
視線を伏せるカエデの両手に2振の黒刀が現れ、漆黒の刀身が黒雷を纏って紫電する。
顔を伏せていたカエデがその視線を上げ……狂気に満ちた面持ちで満面の笑みを浮かべて嗤う。
「遊ぶ、ですか……えぇ、構いませんよ、貴女の言う遊びにお付き合いしましょう」
そう言いつつ、コレールが徐に漆黒の鱗を纏った右腕を持ち上げてカエデに向ける。
「ただし……」
「っ!」
その瞬間。
唐突にコレールが掲げた手から一条の黒い光が放たれ、一瞬の内にカエデへと切迫する。
寸分の違いも無く完璧にカエデの頭部に向かって直進するソレにカエデは首を捻る。
数瞬の内にカエデの頭のすぐ横を通過した光は、遥か後方へと伸びて行き……天高く半球状に広がった黒炎が辺りを照らす。
次いで耳をつんざく凄まじい轟音が鳴り響き、直後に音を消し去る爆風と衝撃波が飛来する。
「私を相手に遊ぶ余裕があれば、の話ですが」
パチン!
コレールが不意に指を鳴らす。
それと同時に統一神界の何処にいても見る事ができると断言できる程の大爆発が収束して消え失せる。
「これ程までとは……」
先程の爆発が嘘だったかの様に静まり返った戦場で、コレールの後ろで黄金の長剣を支えに膝を突いていたジバルが唖然と呟く。
「ふ……ふふ、ふふふっ! 素晴らしい!!
想像以上です! あぁ、想像しただけで身体が熱くなって疼いてしまいます!!」
狂気に満ち満ちた面持ちで凄まじい殺気を撒き散らして嗤うカエデの姿にジバルの顔が軽く引き攣る。
「 ふふふ、さぁ早く殺り合うと致しましょう!!」
そう言うが早いか、カエデが両手に握った漆黒の刀を振り翳し、戦闘狂じみた笑みを浮かべ嗤い声を上げながらコレールへと襲い掛かった。
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