第331話 超有能です!

「では皆、宜しく頼むぞ。

 此度の戦い、必ずヴィスデロビアを討ち倒し、10万年前からの因縁にケリを付けるのじゃ!!」


 どうやら会議が終わった様ですね。

 そして、僕とケーキとの熾烈な戦いにも決着の時ですっ!!


「ふっ、中々の接戦でしたが……ご馳走様でした!」


 ふっふっふ、この会議の間に、用意されていたケーキ全種類ををコンプリートしてやりました!

 これは完膚なき僕の完全勝利と言えるでしょう!!


 ふむ、完全勝利と言えども、流石に激戦を通して体力を削られてしまっていた様ですね。

 端的に言って、眠たい。

 若干目が、本当に若干だけしょぼしょぼします。


 ディゼール特注ケーキと言う強敵を倒したと言うのに。

 まさかその直後に睡魔に出会してしまうとは……!

 ヴィスデロビアとの戦いに向けて、皆んなを呼んで宴を開こうと思っていたのに……くっ、お昼寝をしなかった弊害ですか。


 しかし、いくら眠たくても流石に他の神々の前で寝てしまう訳にはいきません!

 会議は終わりましたし、他の方々が退出するまで何としてでも耐え忍ばなければ!!


 目に力を入れて、欠伸を噛み殺せばキリッとしている様に見えてくれるはず……

 むっ、なんかジバル君にガン見されてますね。

 ボロが出てしまう可能性もあるので、可能な限り見ないで欲しいのですが。


「むぅ……」


 本当に何なのでしょうか?

 何か言いたい事があるのなら後で直接言ってくれれば良いのに……

 

「お嬢様、如何なさいましたか?」


「メルヴィー……」


「ふふふ、お疲れの様ですね。

 他の方々の退出まで暫く掛かりそうですし、このまま少しお休みになられますか?」


 な、なんて魅惑的な提案でしょうか!

 メルヴィーに抱っこされている安心感と、この程よい暖かさ。

 気を抜くと一瞬で意識を持って行かれそうなこの状況で、そんな提案……


「他の方々の対応はお任せ下さいませ」


「そ、そうですか?

 メルヴィがそこまで言うのなら……ふぁ、では少しだけ寝させて貰いますね」


 この状況下で寝落ちを拒める者なんて何処にも存在しないでしょう。

 だからここで僕が少しだけ寝るのは仕方のない事なのです!

 それに今日はこの後、皆んなで宴と言う予定が入ってますし、ここで休んで体調を整えるのは謂わば義務なのですっ!!






 *






 自身の腕の中で規則的な寝息を立て始めたルーミエルの髪を繊細なガラス細工に触れる様に、愛しむ様に優しく撫でる。


 僅かに浮かべていた聖母の様な柔らかい微笑みは、顔を上げた瞬間に消え去り。

 視線の先に立つのは先程の会議の途中で敬愛する主人を侮辱した愚か者。


 どうやら眠たくて目に力を入れていたお嬢様に見られて睨まれてると思い込み、身動きが取れなくなっていた様ですね。


 と、ジバルが置かれていた状況を完璧に読み解いたメルヴィーは、まさに蛇に睨まれた蛙状態だったジバルを殺意と怒気の混ざった絶対零度の視線で一瞥し。

 この場に於ける神々の最上位者であるネルヴィアへと、幸せそうに眠る主人に代わって今後の予定を伝える為に歩み寄る。


「ネルヴィア様、この後ナイトメア統一神界拠点にて宴を予定しているのですが。

 ご参加いただけるでしょうか?」


「宴か! 喜んで参加させてもらうがルーミエルは……寝ておる様じゃな」


「ええ、本日は日課のお昼寝をしておられませんでしたので」


 本来、他者にも自身にも厳しくストイックなメルヴィーからすれば想像できない程に柔らかい声音。

 それに、この会議中のメルヴィーを見ていたシングルと近くに座っていた他数名の視線がメルヴィーに集まるが……


「うむ、今夜の宴も大騒ぎになるだろうし、今の内にしっかりと休ませてやらねばな」


 溺愛するルーミエルにはとことん甘いメルヴィーを知っているネルヴィアに困惑は見られず。

 孫の様に思っているルーミエルを優しく撫でる神王の姿に、それを目撃したシングル達を省く者達が驚きに目を見開く。


「それで宴なのですが、是非ともシングルの皆様にもご参加頂ければと思っているのですが。

 皆様、如何なされますでしょうか?」


「ここにいるネルヴィア様を含めたシングル8名、全員参加させて頂きます」


 メルヴィーの質問に代表してミレーネが答える。


「かしこまりました。

 ああ、あと序列10位のジバルさんも是非ご参加下さい」


「は?」


 突然のメルヴィーの言葉にジバルが疑問の声を漏らすも、その声を完全に無視したメルヴィーは元の場所に戻り。

 他も者達が退出してネルヴィアとフォルクレス、オシークス達と言った顔見知り。

 そして6名のシングルとジバルだけになり、ルーミエルに声をかける。


「お嬢様……お嬢様、皆様方がご退出なされましたよ」


「んぅ……」


「お嬢様主催の宴のお客様達には残って頂いておりますので、しっかりして下さいませ」


「お客様……? はっ! そうでした宴の用意もしないとです!!

 おぉ、シングルの皆さんに加えてジバル君も来てくれるんですか!」


 僕が寝ている間に、シングルの皆さんのみならずジバル君まで宴へと招待済みだなんて。

 流石はメルヴィー! 超有能です! さすメルです!!


「宴の開始は午後9時です!

 今回の余興もまた新しいのを考えているので、是非楽しみにしておいて下さい!!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



諸事情で、シングルの神の数が9名から8名に変更となります。

残りの1枠は空席です。

事前に考えていたプロットでは空席扱いだったのに、時間が無くて焦ってやってしまいました。

ややこしいですが、申し訳ありません!!

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