第297話 ファイヤァーっ!!

 サタンこと、ゼサータレン。

 かつて神々に叛旗を翻したシングルの神、ヴィスデロビアの眷属にして四魔皇の1人。


 炎に特化した権能を有し、黒い炎で相対する者を存在ごと消し去る姿から『黒炎』の2つ名で呼ばれ。

 その実力はダブル上位の神々に匹敵すると、神々との戦いで統一神界にその名を轟せた強者。


 10万年前のアニクスを舞台とした神々とのヴィスデロビア勢力との最終決戦。

 そこで主人であるヴィスデロビアが破れ去り、行方をくらましていた様ですが……


「今となっては地球の裏世界のボスですか……」


 多くのマフィアを裏から操り、麻薬の密売、非合法のカジノ運営。

 各国にゼサータレンの手の者が潜み、国家にすら多大な影響力を持つまさに裏世界の支配者。

 表向きの世界を牽引する覇者が伊波家だとすると、ゼサータレンは影の王ってところでしょうか?


 とは言え、それも仕方ありませんね。

 何せゼサータレンは地球人に文明社会ができる遥か前から地球の闇に潜んでいた訳ですからね。

 人間社会にヤツの根が張り巡らされていても何ら不思議ではありません。


「けど……この僕を差し置いて、裏世界の支配者なんてっ!!」


 実際には多大な力を持ちながら、世間に知られる事は無く。

 各国のトップですら噂程度にしかその概要を知らない謎の人物っ!!


 何という事でしょうか!

 これは由々しき事態です! まさか、神話とかに語られるサタンが僕の目標をなし得ていたなんて!!


「認めるしかありません。

 サタン……いや、ゼサータレンよ、確かに貴様は裏世界に君臨する強者だ。

 しかしっ! 今やその地位は貴様の物だけでは無いのだよっ!!」


 何せこの僕も! 地球ではなくアニクスでですが、その地位を確立しているのですから!!

 しかも! ゼサータレンが今の立場となるまでに10万年も時間を要している。


「それに比べて、僕は1年未満っ!

 明らかに僕の方が、裏世界のボスとして格上なのですよっ!!」


 ふっふっふ、今頃ゼサータレンはさぞかし悔しげに顔を歪めている事でしょう。


「これは……!」

 

「何故、家の地下にこんな設備が……」


「フォルクレス様、あの子は大丈夫なのでしょうか?」


「天照君、キミがそう思うのも当然だけどね。

 ルーミエル君はいつもあんな感じだから気にするだけ疲れるよ?」


 な、何て失礼な言い草!

 フォルクレスの言い方では、僕がいつも非常識な事かつ変な事をしている様では無いですかっ!!


 僕はどこもおかしく無い!

 むしろ豪邸の地下に、豪邸の敷地よりも広大な軍事施設があってテンションが上がらないバカはいない!!


 さらに! この地下軍事施設のすべてを司る特別指令に設置されているこの椅子。

 まるで映画に出てくる何処ぞの大統領や元帥とかが座ってそうな椅子に座ればもうテンションは爆上がりですっ!!


「世界の闇に君臨する支配者同士の戦い……ふっ、面白い事になりましたね」


 そう、こんな椅子に座ると調子乗って、カッコイイ気障なセリフも言ってみたくなるものなのです!!

 ゼサータレンの持つ戦力は、本人を除けば核を筆頭とする近代兵器。


「ここは奴のホームグラウンドですからね。

 ヤツと同じ舞台に立つのも一興ですか……コレール、準備はできていますか?」


「はっ! 恙無く完了しております」


 おぉ! 流石はコレール! 今のは軍人にしか見えませんでした。

 見事な他の皆んなも白で統一された見事な軍服を来ていますし、やる気十分ですね!!


「うむ、例の物を」


「はっ!」


 コレールから一歩引いて控えていたオルグイユがキビキビした動作で恭しく差し出すのは真っ黒のブリーフケース。


「ル、ルーミエル君、それってもしかして……」


「当然、ブラック・ボックスですけど?」


「「「「……」」」」


 とは言っても、本物何て流石に知りませんし、中身は適当ですけど。

 ぶっちゃけ中身はただのスイッチですけど……雰囲気って大事っ!


「かつてオリエントにて繁栄したバビロンの王が作ったとされる法典にこの様な成句があります。

 目には目を、歯には歯を……近代兵器には近代兵器を、そして! 核には核をと!!」


「そんな成句ないからっ!? ちょ、まっ……」


「ファイヤァーっ!!」


 ポチっとな。


「「「え……?」」」


「……ルーミエル君、何やっちゃってるのっ!?」


物々しい雰囲気を醸し出す、軍事施設と言った感じの特別司令室にフォルクレスの絶叫が響き渡った。

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