第291話 到着ですっ!!

「おぉ! なかなかの豪邸ですねっ!!」


 国道を走る事数十分。

 暇潰しでしていたトランプとウノにも飽き。

 トランプの賭けでフォルクレスが1人負けして、頬を痙攣らせ始めた時に漸く到着した訳ですが……


 ヨーロッパとかにありそうなお屋敷では無く、日本庭園の様なお屋敷でも無い。

 ザ・近代美術って感じの超オシャレな豪邸!

 現在、僕が所有する他の拠点やお屋敷と比べれば小ぶりですが……テンション爆上がりですっ!!


「良いですね!

 アニクスの自宅でもこの建築構造を取り入れてリフォームするとしましょう!!」


 それにしても広いっ!

 他の拠点とかと比べたら確かに小ぶりですけど、伊波家の実家に相当する広さ。

 都内にこれ程までに広大な……それこそ、ハリウッドスターが住んでいそうな豪邸を建てられるとは……


「しかもこれ、自重する事なく魔法を使ってますね……」


 幾多もの結界を用いたナイトメアの警備網。

 他の拠点と同等かそれ以上に厳重……下手をするとこの豪邸、地球上で最も警備が厳重なんじゃ無いでしょうか?


「地球には弾道ミサイル等の近代兵器に加え、核兵器があります」


 核兵器はアニクスで言う所の超広域殲滅魔法、伝説に伝えられる魔法に相当する……らしいですけど。

 ぶっちゃけ、モロに喰らっても全く問題ないと言う驚愕の事実!!


 人類の叡智をなして無意味なんて、我ながら人間やめてる人外になってしまったものです。

 まぁ事実、幼女神なんて種族になっている訳ですし、人間はとうの昔に辞めていますけど……


「ナイトメアに核弾頭程度で死ぬ様な弱者は存在しませんが。

 念のために、例え核弾頭を撃ち込まれても問題ない様に結界を構築しております」


 この豪邸の周囲を囲っている結界だけを見ればコレールの言う通りで、ぶっちゃけナイトメアの警備としては中の下!

 問題は敷地内の……


「もし仮に侵入者でもあろうものなら、次の瞬間には細切れになっていますので、ご安心下さい」


 何をもって安心すれば良いのか全く分かりませんね……


「この地球は、お嬢様にとって忌まわしき思いのある世界。

 せめて、この拠点にいる間はお安らぎになられる様にと言うのが、我ら眷属である幹部を含めナイトメア全者の偽りの無い総意です」


「コレール……皆んなもっ、ありがとうございます!!」


 思わぬ所で、皆んなに心配をかけてしまっていた様ですね。

 でも確かに考えてみれば、地球にいた頃はまともに日の下に出られず。

 友達もいなければ、学校では虐められ……本当に嫌な記憶しか無いですね……


 僕の事情を知っていて、過保護な皆んなからすれば、心配するのは当然でしたか。

 これは帰ったら以前から打診があったアレを開催しないといけませんね!!


「確かに地球には良い思い出なんて殆どありませんが。

 今の僕は皆んなと一緒になれてとっても幸せなので、大丈夫です!!」


「「「お嬢様っ!!」」」


「んっ!! エル、良い子」


「ルーミエル様っ!!」


「ルーミエルお嬢様っ!!」


「お嬢っ!!」


 く、苦しい……皆んなして抱き付くから四方八方がおっぱいだらけですっ……!

 四面楚歌ならぬ四面おっぱいですよっ!!


 コレール達男性陣は抱き付いては来なかったものの、涙ぐんで止めてくれそうに無い事が権能で分かってしまいましたし……


「うんうん、本当にキミがダークサイドに落ちなくて私は心底安心しているよ」


 フォルクレスは役に立ちそうにありませんね。

 くっ、こうなったら仕方ありませんね。

 別にこうされているのが嫌と言う訳じゃありませんし、皆んなが納得するまで情報収集と人形に努めるとしましょう。


 ふむふむ、どうやら地球の神々は既にご到着の様ですね。

 お待たせして大変に申し訳ないですけど……仕方ありませんね。

 文句を言われたら全部、フォルクレスのせいにするとしましょう。

 あとは……


「皆さん、とりあえず中に入らない?」


 中々にいいタイミングですよ、フォルクレス!

 皆んなも離してくれましたし、後で最高級のワインをご馳走してあげましょう!


「こほん、仕込みも十全に効果を発揮している事ですし。

 参りましょうか、皆さんがお待ちです」


 拠点の敷地外。

 遥か上空に浮かぶソレを一瞥して、拠点に足を踏み入れた。





 *





 とある国の一般人の立ち入りが禁止された軍事施設の奥深く。


「あれ? 今一瞬……」


 多数のモニターの前に腰掛ける1人のオペレーターが呟きを漏らす。


「どうかしたのか?」


「いや、一瞬こっちを見た気がして……ほら、ここ」


 オペレーターは映像を再生し、その一瞬で停止させてそう言って同僚に見せるも……


「そんな訳ないだろ? 疲れてるだけだろ」


 呆れた様な同僚の言葉に、それもそうかとオペレーターは納得して仕事に戻った。

 それもそのはず、何故ならその映像の上空1万メートル以上に浮かぶ人工衛星からの映像なのだから……


 人間がそんな上空に存在する人工衛星に気づけるはずもない。

 しかし……


「クックック、面白い」


 オペレータールームを見渡せる席に座っていた男はそう言ってニヤリと笑みを浮かべる。

 男の手元にあるディスプレイには、真っ直ぐとカメラに向かって不敵に笑うルーミエルの静止画が映っていた……

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