第273話 まさかの提案です!

 学長室の主人であるオシークスさんがローテーブルに並べたティーカップを一瞥し、オシークスさんへと視線を戻す。


「それで、一体僕に何の様ですか?」


 この学園で一番偉く、統一神界でも重鎮で有るオシークスさん直々にお茶を入れて貰っても関係ありません。

 例え困った様に苦笑いされようとも、今回ばかりは不機嫌を隠しません!


「あからさまに不機嫌ですな」


「別にいつも通りですが?」


 まぁ、認めませんけどね!

 廊下でアイリースさんがあんな事を言うから、ただでさえ目立っていたのに……


 クラスメイトからしてみれば2日連続での呼び出し、他の人からしても入学2日目の呼び出し。

 口には出しませんが、機嫌が悪いのなんて当然の事なのです!!


「フッフッ、そうは言っても、拗ねている様にしか見えんのですがの?」


 メイドの膝の上に座り、頭を撫でられながらジト目で睨む幼女。

 確かに、拗ねてる幼子にしか見えません……だって、実際に今怒ってますからね!

 何とでも言えば良いのですっ!!


「しかし……こうなっては致し方ありませんな。

 ここは大人しく、ルーミエル嬢のご機嫌を取るとしましょう」


 僕の機嫌を取る?

 簡単に言ってくれますね。

 この僕がそう簡単に靡くと思ったら大きな間違いです! チョロフォルクレスとは訳が違うっ!!


「実はルーミエル嬢とメルヴィー殿をもてなそうと、を用意していたのです」


「っ!? こ、これは……!」


「統一神界でも屈指のスイーツの名店ディゼール。

 その中でも毎日数量限定で販売される苺のホールケーキです」


 まさか、これ程の逸品が出て来るとは……

 非常に食べたい、もう目立ったとかどうでも良いから至福の一時を味わいたい!

 でも、このケーキを食べてしまえば、なんか負けた様な感じがして嫌です。


「他にもディゼールのアフタヌーンティーを用意しておるよ?」


「頂きましょう!」


 ふっ、何が負けた様な感じがして、ですか!

 この場合、僕が屈したのはスイーツにであってオシークスさんにでは無いっ!

 そして、スイーツとは食して楽しむ物であって張り合う物では無いのですっ!


 そもそも、多少目立った程度でいじける何て大人気無いにも程があるってモノです。

 アイリースさんのあの様子を見るに……今後、否が応にも今まで以上に目立つ事は確実。


 入試の受付時点ですらあの騒ぎと言う、最初から全く上手くいっていなかった事ですし。

 〝目立たず学園生活作戦〟はもう諦めるとしましょう! これからは〝細かい事は気にするな作戦〟ですっ!!


「はむ……んんっ!」


「お嬢様、クリームが付いておりますよ」


「フッフッ、気に入って頂けた様で何よりです」


 もう本当にオシークスさん、グッジョブです!

 まさか学園に登校して早々、こんな光り輝く様なスイーツをご馳走して貰えるなんてっ!


「では、食べながらで構わないので、本題に入らせて貰いましょう」


「了解ですっ!」


 もう何でも聞いちゃいますよ!


「とは言っても、大した内容でも無いのじゃが。

 ルーミエル嬢、メルヴィー嬢、お2人とも我が学園で非常勤教授になりませんかな?」

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