第15章 統一神界学園編

第250話 受験は戦争です!

 白く、広大な敷地を誇り、優美でありながら荘厳な雰囲気を醸し出す。

 正しくファンタジーな学園と言ったこの場所は、統一神界学園。


 統一神城に匹敵さ程、高度かつ強固な結界が展開され。

 学園関係者以外の者が殆どいない学園は現在、多くの人々で溢れ返っていた。


 この場にいる人々の目的はただ一つ。

 何を隠そう今日この日が、統一神界学園の入学試験が行われる日。


 いつもならば、こんな人混みの中に居れば確実に人見知りが発動する。

 断言しても良い、しかし……


「お嬢様、ご機嫌を直して下さい」


 今は全く気になら無い。

 人混みの中を、メルヴィーを引き連れてズンズン歩く。


「別に拗ねてはいませんよ?

 ただ、ちょっとイラついて、怒っているだけです」


 怒っているからか、周囲の視線が全く気にならない!

 見るなら見るが良い、そして僕から溢れる怒りの波動を感じ取って、恐れ慄くが良いっ!!


「拗ねてるお嬢様……抱きしめたい」


 拗ねて無いって言ってるのに……

 立派な淑女であり、自立した大人ですからね。

 この程度で拗ねたりしませんし、そもそも公私の切り替えは社会人としては当然のスキル!


「あっ」


「こほん、ここは人通りが多く危のうございます。

 僭越ながら、私が抱っこさせて頂きますね」


「メルヴィー……」


 メルヴィーがこう言うって事は……くっ、イラつきで注意が散漫になっていた様ですね。

 まさか周囲から向けられている悪意に気が付かないなんて。


 我ながら情けない。

 これも全ては、あの時のネルヴィアさまが勘違いして、忘れていたせいです!


 オシークスさんの説明が終わり、歓談していた時にふと思ったのです。

 皆んなも来て良いなら、皆んなも学園に行って神として登録してたら良いのでは? と。


 そうなったら、皆んな同じ!

 ネルヴィア様曰く、僕なら特待生は確実らしいですし、皆んなも余裕だし。

 どの道、僕が統一神界に来れば皆んなもついて来るでから一石二鳥!!


 我ながら素晴らしいアイデアだと、自分で言って胸を張っちゃいましたね。

 それなのに……それなのにっ!!


『おや、皆んなと仰ると、そちらのお嬢さん方や黒龍殿達でしょうか?

 それならば、学園に通う必要はありませんな。

 卒業資格さえあれば神として登録は可能、学園長である儂と神王様が認可すれば事足りますからな』


 和やかな顔で言い放たれたオシークスさんの言葉に、一瞬場が凍り付いた。

 唖然とネルヴィア様を見ると……


「あの明らかに目を泳がしたネルヴィア様の顔……許すまじです!

 今度会ったら、ネルヴィア様のお茶とお菓子に無臭の特製激辛ソースを入れてやります!!」


 当然、オシークスさんに事情を話して、願書の取り下げを試みるも……

 神王たるネルヴィア様の推薦に加え、統一神界でも重鎮の一角であるエネトスさんが直接持って行ったせいで、最優先で願書は受理された後。


 一旦受理されてしまえば、もう取り下げは不可能って!

 何故そんな意味不明なルールを作ったのか!

 おかげで、皆んなと一緒に登録大作戦が台無しです!!


「まぁ! ではその時は、私もお手伝い致しましょう」


「ん、お願いします!

 フォルクレスのお仕置きも含めて、激辛ソースの実験をするとしましょう!!」


 ネルヴィア様と同じシングルですし、丁度良いですね!


「ふふふ、それならば帰ったら、オルグイユ様やアヴァリス様と一緒に試作致しましょう。

 おっと、お嬢様、受付に到着致しました」


「おぉ! いつの間に……」


 ここの受付も、美人さんですね。

 冒険者ギルドといい、何故、受付嬢は美人揃いなのでしょうか?

 美人のプロフェッショナル、ちょっと憧れますね。

 今度、遊びでやってみましょう!


「ふふ、これは可愛らしい受験生さんですね。

 お名前と受験票を提示して頂けますか?」


「分かりました!」


 うん、ここに居る人々は全員が神へと至った存在。

 無限収納を使っても、一々驚かれないので楽ですね。


「名前はルーミエル、これが受験票です」


「はい、では確認させて頂きますね。

 ルーミエルさん、推薦者は神王ネルヴィア様……神王様っ!?」


 突然目を見開いて立ち上がり、カウンターから身を乗り出す受付嬢さん。

 大声を出すから周囲の人の注目が……くっ、これが受験の厳しさですか!


 ヤバイです。

 イラつきが収まってしまった様です……でも、この驚愕に目を見開くみんなの視線。

 ちょっと優越感が心地いい! 程よくメルヴィーに隠れて踏ん反り返ってやりましょうっ!!


 もうこの際、周囲の視線なんて気にしてられません!

 ネルヴィア様曰く、どのみち注意されるらしいですしね。

 受験は戦争です! お仕事モードを凌ぐ、戦闘モードで受けて立ってやりますっ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る