第13章 魔教団殲滅編
第200話 叩き潰します!
「外しましたか」
自分でも驚く程、全く感情が伴っていない冷たい声。
これじゃあ、十剣の皆んな達が恐怖を宿した目を向けて来るのも仕方ありませんね。
しかし、今はこうして無理矢理にでも感情を押し殺さ無いと自分でも何を仕出かすか分から無い。
落ち着かなければ。
「……」
あの女、リーリスが去った事で、ノアとシアを拘束していた魔力が解ける。
2人は重力に従って落下し始めますが……当然、地面に落とされる事なんて許しません。
ゆっくりと。
出来るだけ刺激しない様に魔力で包み込んで勢いを殺し、その間にふかふかで清潔な毛布を神能から取り出して地面に広げる。
この2人を地べたに下ろす事なんて絶対にしません。
細心の注意を払って2人をふかふかな毛布の上に寝かせました。
「神能、並列起動」
〝神獣ノ王〟で眷属たるノアとシアとの繋がりを強化し、〝殲滅ノ神〟の神速再生の効果を付与する。
温かな白い光が一瞬で2人の傷を癒して完治させる。
荒く、浅かった呼吸が落ち着き始めましたし、これで大丈夫ですね。
多分以前よりもスベスベ、モチモチなお肌になっている事でしょう。
尤も、魔力が枯渇しそうになってましたし、身体的なダメージを回復させただけなので直ぐには目を覚さないでしょうけど。
「ルーミエル様……」
「私達が油断したせいです」
「お嬢様……申し訳ありません」
オルグイユが心配そうに眉を下げ、メルヴィーが泣きそうな顔で頭を下げました。
アヴァリスに至っては苦虫を噛み潰した様な面持ちで自分を責めています。
「皆んなのせいじゃありません。
これは敵を甘く見ていた僕の責任です」
僕は
上に立つ者には、相応の責任が生じますからね。
今回も、僕が敵である魔教団を甘く見たせいでノアとシアはこんな事になってしまったのです。
「決して自分の力を慢心せず、油断せず、敵を侮らない。
この世界に来て、初めに誓ったはずだったんですけどね……」
魔教団の支部を潰せたからか、はたまた超越者に、神に至ったからか。
いつの間にか僕は自分の、自分達の力を過信していた様ですね。
その結果が、この様とは……本当に嫌になります……とは言え、泣き言ばかりを言っている訳にもいきません。
幸い2人は無事でしたし、今後に活かせる様にしましょう。
「3人ともそんな顔をしないで下さい。
ほらアヴァリス、手から血が出てるじゃ無いですか」
「ルーミエルお嬢様……」
血が滴るアヴァリスの手を取って包み込む。
きっとノアとシアを人質に取られて、何も出来ない悔しさに握り締めてしまったのでしょう。
「アヴァリス、そんなに自分を責めないで下さい。
オルグイユとメルヴィーもです!」
「はい、わかりました」
「ふふふ、そうですね」
「承知いたしました」
さ、3人から向けられる視線が妙に生暖かい気が……てか、3人とも落ち込んで無さそうですね。
せっかく、努めて明るく振る舞ったのに……
「うっ……」
「お嬢、様?」
「っ! 気が付きましたかっ!?」
よかった……これで、本当に一安心です。
「そ、そうだ、私達……」
「申し訳ありません、とんだご迷惑を……」
泣きそうな顔で目を伏せ、白く大きな耳をペタンと倒す。
はうっ!? ……こ、これは凄まじい破壊力です!!
とりあえず、もふもふしたいっ!
「あっ!」
ふらっと倒れ込みそうになった2人を何とか支える事が出来ました。
危ない、危ない。
「傷は全快させたとは言え、魔力は枯渇寸前ですし体力までは回復していません。
今はゆっくりと休んで下さい」
「申し訳、あり、ま……」
「ご迷惑を…おか、けしま、す……」
気絶する様に眠ってしまいました。
もふもふは……まぁ、仕方ありません、我慢しましょう。
「それにしても……」
至る所が裂け、赤黒く血が滲んだ2人が着ているメイド服。
そして脳裏にチラつく血塗れになった2人の姿。
「ルーミエル様っ!!」
「ルーミエルお嬢様っ!?」
「お嬢様っ!!」
3人の悲鳴の様な声をあげる。
噛み締めた唇の端が切れて口の中に血の味が広がり、握り締めた手かは血が地面に滴る。
ダメですね。
さっきアヴァリスに偉そうに語ったばかりなのに、これじゃあ僕も人に言えませんね。
「大丈夫です」
僕達は強い。
それは紛れも無い事実です。
しかし、それを驕ってはいけない、それに慢心してはいけない。
物語でも弱者が圧倒的強者である悪を倒すのはセオリーですからね。
「フェル。
コレール。
オルグイユ。
リュグズール。
アヴァリス。
エンヴィー。
グラトニー」
振り返ると、そこには跪く7人の姿。
「僕の眷属に……僕達の家族に手を出した事の愚かさを、奴らに教えてあげますよ」
この世界では慢心を抱き、油断した者から死んで行く。
だからこそ……全力を持って容赦無く叩き潰します!
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