第128話 鬼ごっこなんて如何ですか?
2、3分、滅光魔法を撃ち続けてますが……飽きてきましたね。
何というか、面白くない。
だいたい、僕ってこんな風に痛めつけるのって苦手なんですよね。
相手的にも、僕的にも一瞬で殺した方がよほど生産的です。
「そうだ、〝鬼ごっこ〟なんて如何ですか?」
滅光魔法を止めると、ドチャっと音を立てながらディベルが地面に倒れ込みました。
とは言っても死んではいませんけど……多分、取り敢えず回復させておきましょう。
「鬼ごっこ?」
あっ、よかった。
ちゃんと生きてました。
途中から、面倒で適当に撃っていたので、ちょっと焦りました。
「そう、鬼ごっこです。
貴方達的に言えば〝狩〟ですかね?」
コイツらは〝狩〟と称して捕まえた人達を迷宮内に逃し。
追いかけて殺したり、魔物に食わせたりして楽しんでいました。
「そうとなると場所を変える必要がありますね。
取り敢えず、地上にでも転移っと」
指を鳴らすと切り替わる視界。
もともと知覚出来る範囲であれば座標を割り出す必要すらなくて楽ですね。
「人間って何処の世界でも残酷ですよね」
地球でも中世の奴隷制度が蔓延っていた時代には同じ様な事をしていたみたいですし。
「何処で狩の事を……と聞いても答えてはくれないのでしょうねぇ?」
攻撃も止んで、身体も全快した事でいつもの調子が戻って来たみたいですね。
強制転移させられた事に一瞬、目を見開きましたが、すぐに笑みを浮かべました。
まぁ、これでも魔教団の最高幹部の1人ですしね。
「勿論面倒なので説明なんてしません」
本当は、さっきまでディベル達がやっていた会議を盗聴していただけですけど。
ディベルの魔力反応のある場所に盗聴機を飛ばしただけなので、座標は把握して無くて、危うく挨拶で殺してしまうところでしたけど……
「あっ、あなた方の様に魔力を封じたりしないので、全力で抗ってもらって結構ですよ」
「それは貴女にとって、私など取るに足らないと言う事ですか?
随分な自信ですねぇ?」
「えっ? 僕は鬼ごっこに参加しませんよ?」
全く、何を分かりきった事を。
鬼ごっこなんて疲れる事、僕がする訳ないじゃないですかっ!!
「では一体誰が私を狩ると?
貴女のお仲間はまだ戻って来ていない様ですがぁ?」
「本当、一々気持ち悪い話し方しますね。
貴方は信じていないみたいですけど、ここは僕が作り上げた世界ですよ?」
前方に手をかざして〝創世ノ神〟を発動させる。
「貴方を追いかける〝鬼〟を造れない訳無いじゃないですか」
尤も、この権能が発現したのはついさっきですけど。
でも、世界が造れるのにその世界に住む生物を造れない訳無いんですよね。
だって、テンプレさんですし。
本当、つくづくご都合主義です!
「まぁ、生命の創造は僕本来の力からは少しズレるので、知っている生物しか創り出せません」
僕の神能〝創世ノ神〟はもともと生命では無く、物質の創造を司る権能ですからね。
生き物を造るのは苦手です。
「でも。
鬼ごっこの〝鬼〟なら、それで十分です」
僕とディベルとの間に現れたのは、3体の巨大な魔狼。
まぁ、言ってしまえば、僕が超越者になる為の修行で屠りまくった魔物達の一体です。
「この子達の種族は、フェンリル。
巧みな連携を持って敵を追い詰める狼の王です」
はっ!?
もしや、今ならば僕だけのモフモフ天国を作り上げる事が可能なのでは?
ま、マズいです!
こんなシリアスな場面なのにちょっとニヤけてしまいそうです!!
「ば、バカな。
生命の創造、それではまるで……」
神ではないか。
消え入りそうな声でそう呟いたディベルは、目の前に現れた3体の魔狼を、そして僕を見上げる。
その視線に僕は内心の動揺を悟られない様に、微笑みを持って答えました。
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