第121話 何これ、カッコいい!!

「少しだけ待って欲しい」


 むぅ、出来るだけ早く帰りたいのですが……仕方ありませんね。

 僕は見た目は子供、頭脳は大人なのです! 我が儘を言ったりはしません!!

 多分、きっと…努力はします……


「構いませんよ」


「恩に着る。

 爺、直ちに十剣全員を召集してくれ」


「心得ましたぞい」


 そう言って頷くと、手に持っていた杖を地面にカンッと打ち付けました。

 その杖を起点に広がる魔力の線。


 どうやら、魔法陣を組んでいる様ですね。

 ふむふむ、このお城自体がこの魔法陣を補助する配置で建築されているみたいです。


 例えるならば、地面に掘った用水路で絵を描く感じでしょうか?

 魔力を流せば城壁などの上を魔力が自動で走って、魔法陣を完成させてくれるみたいですね。


「う〜ん、アイデアは良いんですけど。

 ちょっと大袈裟すぎですね」


 見たところ、今展開している魔法陣は空間属性。

 事前に登録しておいた魔力反応の場所にここまでの扉を繋げる、と言ったところでしょう。

 こう言っては何ですが、空間魔法LV8あれば容易に出来ます。


「しかも、起点となる場所はそこの一点のみ。

 残念ながら本部での採用は無さそうです」


 僕としては好きですけど。

 効率を考えるとこのシステムを採用するメリットが一切ありませんからね。

 まぁでも本部じゃなくて、今度お家に設置して遊ぶとしましょう!!


 脳内でどんなエフェクトを作ろうかなぁ。

 と、ちょっと妄想に浸っている間に、次々と大賢者さんの前の空間が歪が生じ、そこから人が出てきました。


「十ノ剣が神童、御前に」


 一列にずらっと並んでいた総勢10人のうち、一番右にいた少年が唐突に大賢者さんとネルウァクス帝に向かって跪きました。


「九ノ剣が剣鬼、御前に」


 すると今度は、一番左側にいた茶髪の大男が跪き。


「八ノ剣が疾風、御前に」


 次はさっき跪いた一番右の少年の隣にいた淡い緑の髪をした女性が跪きました。


「七ノ剣が凍刃、御前に」


 そして次に跪くのは、左から二人目にいた青い髪の女性。

 ここまで来れば確定ですね。

 どうやら左右交互に席次と二つ名を言っていくスタイルの様です。


「六ノ剣が却炎、御前に」


 真っ赤な炎の様な髪色の青年が。


「五ノ剣が万剣、御前に」


 軽くウェーブのかかった黄金の長髪の女性が。


「四ノ剣が修羅、御前に」


 軽く赤みがかった黒髪の男性が。


「三ノ剣が破砕、御前に」


 グレーの髪をした男性が。


「二ノ剣が剣姫、御前に」


 光り輝く様な銀髪の女性が。


「一ノ剣が剣聖、御前に」


 金髪碧目、王道爽やかイケメンの男性が。

 この場に転移門を潜って現れた全員が跪き、そして……


「「「「我ら十剣、只今御前に参りました!」」」」


 何これ、カッコいい!

 ちょっと感動してしまいました!!


「よく集まってくれた。

 皆、楽にしてくれ」


「「「「はっ!」」」」


 その言葉を受けて、全員が一斉に立ち上がる。


「今回皆を呼んだのは、お前達全員に聞かせておきたい話があるからだ」


「話、でしょうか?」


 ネルウァクス帝の言葉に、一番最後に跪いた爽やか金髪イケメンがそう問い返しました。


「そうだ。

 本来であれば、帝国を脅かす危機にのみ使う緊急招集だが、今回はその必要があると判断した」


 うわぁ、なんかめっちゃ大事になっちゃってます。

 ちょっと悪い事をした気分ですね……


「では、こちらの方々が?」


「そうじゃ、彼らがその話を持ってきた者達じゃ」


 こちらを振り返り、目があった僕にニッコリと微笑んでくれた銀髪の女性の疑問に、大賢者さんがそう答えました。


 そして問題は、今の2人のやり取りのせいで全員が僕達の方を見つめてくる事です。

 まぁ、僕達がいる事はこの部屋に入った瞬間に全員が気づいていたので、どの道こうして注目を集める事になったでしょうけど……


 ガンバレ僕っ!

 お仕事モードです。

 超越者たる、お前なら出来る!!


「こほん、では改めまして。

 僕の名前はルーミエル、またの名をノワールと言います。

 どうぞお見知り置きを」


 十剣の人達も目を見開いてビックリしてますし。

 2度目になるネルウァクス帝と大賢者さんですら、ちょっとだけ驚いているみたいですね!


 やり切りました……この完璧な挨拶、我ながら惚れ惚れしちゃいます!!

 先程の十剣の皆さんのやつもカッコ良かったですが……


 優雅で余裕のある微笑みを浮かべつつ、紳士の様にお腹に手を添えて軽く頭を下げる。

 これは、これでカッコいい!!

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