第51話 強欲と色欲の眷属

 まさか、こんな展開になるとは予想していませんでした。

 しかし結果オーライです! 仲間は多いほうがいいですからね!!


 僕は眼前で跪く巨乳美女さんことセルケトとモフミミ美女こと九尾狐……ふふふ、もふもふです。


「わかりました。

 2人には僕の眷属となってもらいましょう」


 しかし、困りました。

 2人を眷属にすると言う事は、名前を授けなければなら無いと言う事。


 っと、普段の僕ならあだ名様を悩ませる事になったでしょう。

 しかしっ! 今回は違います。


 そもそも、今回は初めから2人を仲間に誘うつもりでしたからね、事前に考えて来ていたのです!!


 まぁ、この迷宮の管理者を眷属に誘おうと思っていたのは、信頼できる眷属。

 組織の中枢を担う幹部を七名揃えたいからです。


 七名なのはコレール達の名前が七つの大罪にちなんだものだからと言うモノですが。

 まぁ理由なんて何でもいいでしょう。


 九尾狐であるモフミミ美女さんは強欲を意味するアヴァリス。

 そして蠍と関連のあるセルケトである巨乳美女さんは色欲を意味するリュグズールですね。


「では、お二人に名を授けましょう。

 九尾狐さんには強欲を意味するアヴァリス。

 セルケトさんには色欲を意味するリュグズールの名を授けます」


 その瞬間、僕と2人との間に確かな繋がりが確立されたのを感じました。


「ありがたき幸せにございます。

 これよりこのアヴァリス、ルーミエルお嬢様の眷属として恥じぬ様尽力致します」


「オレもお嬢の盾として役に立って見せるぜ!」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 新たな眷属となった2人に出来る限り鷹揚に頷く。

 初めは何にしても威厳が大事ですからね!


 う〜ん、それにしてもラッキーでしたね。

 まさか、コレールが深淵の試練から適当に転移した近くにあった帝都で、これまた偶然にもこの家を見つけられるなんて。


 しかも、半日以下という限りなく短い時間で攻略することが出来たし。

 その上、アヴァリスとリュグズールの2人の眷属を仲間に加えることが出来ました。


 ここまで、順調に事が運ぶと逆に怖いですね、裏で誰かが後を引いていそうで……

 けどまぁ、幾ら神様達でもそこまで僕達の行動に干渉する事はできないでしょうし。

 多分その線はないでしょうけどね。


 これが、あの有名なご都合主義というヤツですか……テンプレさんが健在なのだからいつか来るとは思っていましたよ。


 まぁ、出来れば僕が追放される前。

 もしくは、追放された直後に来てくれると嬉しかったですがね。


「そろそろ、ですね」


「ん? お嬢そいつはどう言う意味なんだ?」


 僕がもらした呟きにリュグズールが反応しました。

 そして彼女の声につられて皆んなの視線が僕に集まる。


 しかしっ! 侮ることなかれ。

 魂で回路が繋がっている眷属達の前で、僕が人見知りを発動させる事はあり得ません。


 そもそも人見知りとは、知らない人に対して起こる現象ですからね。

 家族とも言える眷属達には関係無い事なのです。


「僕はこの迷宮の管理者であるアヴァリスとリュグズールを眷属としました」


 僕のその言葉に全員が頷くのを確認し、僕は言葉を続ける。


「それは、もう一つ意味も持ちます。

 この迷宮、神聖の試練を攻略した事を意味するのです」


「お嬢様、それではまさか?」


 ん、どうやら察しのいいコレールとオルグイユは分かった様ですね。

 大神達の創りし、八大迷宮の一角であるこの神聖の試練をクリアしたと言う事はつまり……


「神々からの招待です」


 僕の事を見ていた眷属達にそう言った瞬間。

 意識が一瞬シャットダウンしました。

 そして、次の瞬間には……


「フフフ、やぁ久しぶりュッ」


 視界に入った怨敵の顔面を思いっ切りぶん殴ぐる。

 笑みを浮かべていたその頬に、ジャストミートした僕の右ストレート。

 怨敵は凄まじい勢いで吹き飛び、地面に落下したのにゴロゴロと転がって漸く止まりました。


「……えっ?」


 その光景を一瞥すると、背後からもう1人の怨敵の声が僕の耳に飛び込んで来ました。


 その瞬間、背後を振り返る事無く、バックステップで敵に接近。

 左足を軸に勢いをつけて回転したまま、困惑の表情を浮かべる2人目の怨敵にビンタを食らわせました。


 ビンタをまともに受けたその存在は、不規則に空中で回転しながら吹き飛び地面に頭から落下。

 怨敵の数はあと1人、そしてその1人は……


「落ち着くのだ!」


 そんな声と共に僕の影から怨敵が飛び出し……そのがら空きのボディーに僕の回し蹴りが見事にめり込む。

 会心の一撃を受けた怨敵は、身体をくの字に折りながら吹き飛びました。


 この間僅かに0.1秒以下。

 その刹那の内に3名の怨敵に一撃を加えたルーミエルは、その光景を見渡し満足げに一度頷く。


「ふぅ〜、まぁこれで許してあげるとしましょう」


 そんなルーミエルの言葉と共に、停止していると勘違いする程、静かで短い時間が再び動き出す。


「あらあら、これは一体どう言う状況でしょうか?」


 やり切った感に浸っていると、不意にそんな声が聞こえて来ました。

 その声の方向を向くと、そこには1人の女神。

 この場にいると言うことは、おそらくこの神様は……


「初めまして、僕の名前はルーミエルと言います。

 貴方は神聖の大神でしょうか?」


「ええ、私が神聖の大神ソシリアです。

 それにしても、やっぱり私を解放してくださったお方ですね。

 あのお三方をお倒しになるなんて」


 そうニッコリと微笑みを浮かべる女神様。

 う〜ん、なんと言うか母性を感じますね!!

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