不治の病の恋人

臥(ふ)せる場所から見える景色は

幾度となく変わり行き


時折、鼻をかすめる花の匂(にお)いが

潤(うるお)してくれた


されど人々の声は

治らぬ病を祟りだ災厄だと私を蔑(さげす)む


最愛の人に合わぬままの別れの手紙

来世は会えるか、、、など我が恋心の厚かましさよ


そして迫る生命の最後でさえ

不治に慄(おのの)き誰も看取らぬ悲しき時よ


あぁ、、、さらば、、、と

空虚に晒す侘(わび)しい震える私の手に重なる手


見えぬ霞む景色の中に聞こえる声


“ようやく辿り着きました、最愛の貴方様”


別れの手紙が紡いだのか、それとも幻聴か


けれど私は不治に冒(おか)された災厄だ

私を忘れ歩んでくれと返したが


“とうに手遅れで御座います、私もまた

貴方という不治の病に冒されてしまった様です”

 

涙の雫が一筋、頬を伝うのを感じながら

震える手で重なる手を握りしめ瞼(まぶた)を閉じた


















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