第111話:GW合宿二日目 (下-Ⅵ)

「先ほどまでの表情やイ○た時の反応の割には随分とお静かだったように思われるのですが、これは私の勘違いでだったでしょうか……お嬢様」


「(んっ、……はぁーっ、はぁーっ、ひーくん以外の人に…はぁ、えっちな声聞かれ、はぁ、はぁ、嫌……。それから、Sなひーくんも素敵だったけど…そろそろいつものひーくんに戻って、ほしい……)」


俺以外の人間に自分の声を聞かれたくないという理由があったとはいえよくもまあ我慢できたなと彼女の気持ちに対する嬉しさよりも関心の方が上回る程のエロく、たどたどしい喋り方でそう言ってきたのを聞き、そこらの男ならここで相手の要望通り元の性格に戻るorこのまま継続という選択を取るのだろうが……


「いつもの俺って言われてもなぁ。どんなんだ? 取り敢えず彩乃の頭撫でていい?」


そう普段通りのテンションで問いかけると彼女は名残惜しさと期待感が入り混じったような雰囲気を感じさせながらもこちらがそれをやりやすいよう自分の上半身を後ろへと下げ


「(うん♡)」


「じゃっ、遠慮なく…と言いたいところだけど、可愛いだけじゃなく未だにえっちなスイッチが入りっぱなしの彼女をこのままにしておくのは凄く危険だと思うんだよねぇ、俺は」


そんな普段の一之瀬陽太なら絶対に言わないであろうセリフを、つまりはSキャラ彼氏を継続中であることがハッキリと分かるような言動の言を行った後、そのまま自然な流れで彼女の右肩が少し露出するくらいまで襟を横へズラし


「(んぅ⁉ ちょっ、だ…め。い、ま、くびすじに…ちゅーは……んぁっ♡ )」


(普段はキスマをつけられる側だし、それはそれで別に悪くなかったんだけど……この独占欲が満たされる感じマジでヤバい。ヤバいんだけど……やっぱりこれに関しては彩乃にやられる方が俺は好きかなぁ)


などと若干思考が普段の自分へと戻りつつあることを感じるとともに、流石にこれ以上いじめるのは拙いかと思い始めた瞬間


(んん? なんか少し離れたところに上原らしき人物が見える気がするんだけど……眼鏡がないせいで全然見えん)


(見えんけど、なんか見てはいけないものを見てしまった、ど〜しよう(泣き) 的な感じになってることだけは分かるな。というかアイツの人間性のおかげか見られたことに対する嫌悪感が全くないどころか、逆に申し訳なくすら感じるんだけど)


(………取り敢えず彩乃はこのことに気付いてないみたいだし、ここはシーっいうジェスチャーで―――っ⁉)


「んむっ……、ちゅ、ちゅぅ~。んふっ、んぅ……っ♡」


「(おい、待て待て待て! 今首筋にキスするのは止めろ! 今からシャワー室に行くから、そこでならいくらでもしていいから、マジで止めろって!)」


「(ひゃっほいいあけじゃあくひまだにひっちなしゅいっちああいりっぱはいのあれしをほのあまにいてあくのあふごふいけんあとおもふんあよえ、あはしは。(カッコいいだけじゃなく未だにえっちなスイッチが入りっぱなしの彼氏をこのままにしておくのは凄く危険だと思うんだよねぇ、私は)」


(クッソ、上原に気を取られているうちに少し落ち着いたこともあって仕返ししにきたぞこの子。つか確かにさっき俺はお前に対してシーてっやったけど、だからっていつまでもそこで自分の口を押えながらあわあわしてんじゃねえ‼)


なんて心の声が届くはずもなく、どこから見られていたのかは不明だが少なくとも俺達が中庭から校舎内へと移動していくところまでしっかりと見られていたのは確実である。

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