第53話:お昼ごはん

今日から彩乃がウチの女子マネになるというのはどうも本当だったらしく俺が練習前に脱いだ長袖のウィンドブレーカーを勝手に着ながら仕事をしていたが、まあいくら暖房がついているとはいえパーカー一枚では寒いだろうし気に入ってくれているなら何でもいいんだけど。


ということで何だかんだありながらも午前中の練習が終わり、それぞれコンビニなり購買なりに向かい始めたので俺は弁当を持ってきている健太を連れて学食に行こうとすると上着が大きいせいで萌え袖状態の彩乃が両手で俺の手を掴み、身長差のせいで若干上目遣いになりながら


「ねえひーくん、私達と一緒に教室でお昼ご飯食べよう?」


(なにこの可愛い子……じゃなくて、友達から彼女になった彩乃に対してどう接すればいいのか分からなさ過ぎて無意識に考えないようにしてたわ。危ないあぶない)


「じゃあ購買でパンでも買ってくるから先に行って―――」


「ひーくんのお弁当も私が作ってきたからそんなのもを食べるくらいならこっちを食べなさい」


(えーーー、なんかいきなりうちの彼女が怖くなったんだけど、何事⁉)






まあ折角お弁当を作ってきてくれたのならということでありがたくそれを頂くことにした俺はようやく彩乃と付き合っていることに気付いたらしい健太を連れて自分達の教室へと移動し、『いただきます』をしてからまずは白ご飯を一口食べ


「美味っ!」


「いやお前、彼女が作ってくれた弁当にもかかわらず一口目に食った白米でその感想はどうなの? なんで今飲んでる味噌汁までその感想を我慢できなかった?」


「そういう恋愛下手なところも全部引っ括めて私はひーくんのことを好きになったんだから、菱沼は余計なこと言わないで」


(去年この二人は同じクラスだったらしいから別に仲がよくてもおかしくはないけど、それだけでここまでの関係になれるとかお互いコミュ力高すぎない? 少しその能力を分けてほしいくらいなんだけど)

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