第39話:ひーくんが帰った後の校長室 (下)
「先ほどの話の続きだが、いくら私が校長という立場にいるだけでなく先生方を通さずイチから直接情報が入ってくるとはいえ流石に彼を守り切れる自信はない。実際A男のことだってまだどうなるか分からないしね。そこで佐々木君にお願いだ」
「ひーくんのことなら言われずとも最初から守っていくつもりでしたし、もし校長が彼の期待を裏切ったとしても私が付きっ切りでフォローしていきますので安心して早期退職でもクビでも好きにしてください」
「確かに私はイチの手綱をしっかりと握ってくれるような彼女を作るようお願いしたが、これはまた恐ろしい子を好きになったものだね。これでは悩みが減るどころか更に増えてしまったじゃないか」
(別に私はさっきまでのひーくんみたいに凄く頭の回転が速かったり知識量が多いわけじゃないけど、少なくとも表面上は困った感を出してるからこのまま黙っておこ)
「交換条件ってわけでもないですけどそろそろ私の質問に答えてもらってもいいですか?」
「まあ取り敢えず言っておきたかったことは一通り言えたし、私が答えられる範囲内であればどうぞ」
「さっき二人で話していた鍵を渡しておくとか、好きに使ってくれとかってなんの話だったんですか?」
「あれはちょっと前にイチから一人暮らしするのにいい場所はないかと聞かれてね、『それなら今は物置部屋として使っている私の家を貸そう』という話になったんだよ。そろそろ掃除しなければと思っていたからタイミング的にも丁度よかったしね。まあ流石にタダでというわけではないけど普通に借りるよりは断然お得な値段にしてあるよ」
(私みたいに事情があるならまだしも普通に今まで実家で生活していた高校生がいきなり一人暮らし? ………もしかして明日香が電話した時に聞こえてきた女の人と)
「念のために言っておくが私の知っている限りイチに彼女はいないし、あの子が下心や女性をキープしておくなんて下衆なことのために一人暮らしを始めたりはしないよ」
「そんなこと言われなくとも分かってます……と言いたいところなんですけど、修学旅行二日目の朝に電話を掛けたら後ろから『すいません、お待たせしちゃって』っていう女の人の声が入ってきたんです。しかもその後無理やり電話を切られちゃって」
「修学旅行二日目? あー、それに関して私からはイチのことを信じてやってくれとしか言えないな。って言っても相手が好きな人ともなればそうもいかないか」
(なんで校長の方が私よりもひーくんのことを知ってるのさ! ホントなんなのこの人)
「今年でいうと夏休み明け初日にイチが学校を休んだり、次の日はちゃんと登校してきたものの一日中寝ていたことを覚えているかい?」
「はい、覚えてはいますけど」
「実は彼、学校に内緒でとある仕事をしているのだけど数ヶ月に一回東京で打ち合わせ的なことをする必要があってね。あの日も仕事をしに行くと言っていたから君が聞いたという女性の声は仕事相手だと思うよ」
(学校に内緒にしてることを校長が知ってるってどういうこと? しかもそれを黙って見過ごしてるとかこの学校本当に大丈夫なの?)
そんな疑問を抱きながらも予想外の収穫があったということで私はお礼を言ってから校長室をあとにした。
ちなみにA男の処分に関してだが校長の思惑通りにいったらしく停学処分で済んだらしいと、ひーくんからL○NEで教えてもらった。あとA男は絶対に許さない。
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