第23話:その頃彩乃は

初めて一之瀬君と出会った新学期初日。お世辞抜きでカッコいいと思ったし、凄く真面目そうな人だなと思った反面どこか暗くて何にも無気力そうな彼を見て、正直私の嫌いなタイプかもとすら考えていた。


新学期が始まってから一ヶ月が過ぎた頃。私の記憶が正しければ初めて彼のことが気になりだしたのはこのあたりからだったと思う。切っ掛けは一之瀬君の日直だったけっかな?


そこからバドミントンで初めて見せてくれた生き生きとした表情に惹かれ、このまま続けたらもっと色んな表情や姿が見れるかもしれないと明日香のことすらも忘れて引き留めようとしたり、シャトルランが始まる前に彼のことを馬鹿にする会話を聞いて腹が立ったり、学年最高記録に間に合った時・なった時は自分のこと以上に嬉しくなったことを今でもちゃんと覚えている。


その他にも今日まで色んなことがあったけれどその中でも一番キュンとさせられたのが夏合宿初日に見た子供みたいにはしゃぐ一之瀬君の姿で


一番カッコいいと思わされたのが二日目に見た意地でもトップを走り続けようと頑張る一之瀬君の姿で


キュンキュンするとかカッコいいと思わされるとか以上の……どうにかしてこの気持ちを発散させないと大好きが溢れ出しすぎてどうにかなっちゃいそうにさせられたのが三日目に見た今までのものとは比べ物にならないくらい真剣な顔でプレーしている姿で、一点一点が決まるごとに見せるスポーツ選手らしい喜びの表情で、でも一番最後の試合に勝った時は子供みたいな笑顔で嬉しそうにハイタッチするというギャップで


そんな姿を見たことによって私の心が……体が………恋の本能みたいなものが今までに経験したことのないほどまでに強く反応した。






それから私は自分でどうすればいいか考えたり明日香に何回も相談したりし、まずは仲良くなることから始めることに決めた。決めたというのに


「えーと、一之瀬以外は全員出席と」


(なんで今日に限って学校にこないのさ! 今日から頑張って最終的には一之瀬君に私のことを好きになってもらおうと思ってたのに‼)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る