第7話 泣き落としは1番の武器

桜ヶ丘学園に入学してひと月程が経った。自己紹介の時に男だって言った時に驚かれはしたものの特に何も無かった。


桜ヶ丘学園は私服登校ができる所がうりの緩めの高校だ。

まぁ入学してみると意外と制服姿の方が多くて驚いたが可愛いデザインだった為納得した。


「高校になってもこの4人だとアレだな。」

「ならあんただけいなくなればいいわ。」

「いやいやそんな事したらお前ら親に言うだろ?」

「当たり前じゃない!拓馬がサボったって言ったらどうなるか楽しみだわ。」

「やめてくれ!」


学食で拓馬と千夏が言い争っているがボクも代わり映えがないなとは思う。時々愛香姉が合流したり卯月が仕事で居ない以外、つまりボクと拓馬、千夏は固定だ。


「ボクは仲良い人いないけど拓馬と千夏はいないの?」

「いなくは無いが昼飯を食べるほど仲良くは。」

「女子は昼飯を食べる時にもあーだこーだ貶したりするから昼飯くらいはゆっくりしたいわ。」


2人とも思ってるより大変なのかもしれない。


「というか那月は友達いなかったの?」

「あぁ、こいつクラスだと深窓の令嬢とか言われて俺以外話しかけないんだよ。」

「納得したわ。」


ボクと拓馬は同じクラスで卯月と千夏は別のクラスな為ボクの状況を知らないのだろう。


そうボクは入学して自己紹介したにも関わらず女子みたいに扱われ今では深窓の令嬢と言われたりしていた。

拓馬から教えてもらったのだがなんでも男子だけの人気投票(ボクは男なのに誘われなかった)で輝く女子人気1位を取ったらしいがボクは男である。

また女子も似た人気投票(何故かボクも誘われた)やつでは男子人気1位を取ったのだが何故だろうか釈然としなかった。


「だからか知らんが那月はうちのクラスじゃ高嶺の花どころか保護する動物になってみんな遠巻きに見ているだけだぞ。」

「何その愉快な仲間たちは。」

「1度うちのクラスに来るといい。なかなか面白いぞ。」


実際ボク達のクラスは愉快な面々だと思う。クラスカーストはあるけどみんな仲がいいしこの前もクラスみんなでカラオケにも行ったらしい。ボクと拓馬は鉄華でバイトをしていて行けなかったが。


「うちなんてイジメはまだないけどガラが悪いのがいたりするから大変よ。」

「ま、その時は俺を呼んでくれ。何とかしてやるよ。」

「当たり前でしょ?あんたはあたしや那月達の為に馬車馬の如く働くのよ!」

「ひでぇ!」


千夏って拓馬より強くなかったっけ?とは聞かない方がいいのだろう。


「そういや卯月は仕事どんな感じ?」

「私?順調だよ。ただ家族に会いたいって言われるかな。」

「どうして?」

「この前待ち受け見られてツキナが家族だって知られちゃってね...」

「へー。」

「それで1週間後に家に撮影が来るからツキナになってもらいたいの。」

「ごめん、もう一度お願い。」

「それで1週間後に家に撮影が来るからツキナになってもらいたいの。」

「どうしてそうなったの!?」


そうして語られる事情。卯月のアイドル友達であるカレンという子が待ち受けを見て話していたところにマネージャーが来たらしい。

もともとバラエティ番組のお宅訪問に出る予定だったのだが、ツキナが家族だと知られたので是非ともツキナにも出て欲しいとのこと。


「拓馬の家に泊まりに行っていい?」

「いいぞ、ウチの親も喜ぶ。」

「だのむよぉぉぉぉぉなづぎぃぃぃぃぃぃ。」

「服を引っ張らないで。ボクは嫌だよ!」

「わだじをだずげるどおもっでぇぇぇぇ。」

「嫌だね!」


黙って言わなければボクもいただろうが卯月はそこら辺はちゃんとしているから今言ったのだろう。

だが残念ながらボクはツキナにもうなりたくは無いのだ。

まぁ愛香姉と卯月とPearl Boxで撮影しなきゃいけないけど。


「本当にダメ?」

「上目遣いで見てもダメ。」

「モデルデビューするとしても?」

「ダメ...って待って?」

「分かった!お母さんにモデルデビューしてもいいって言うね!」

「待って待って。もしかしてお母さんもツキナとして出ろって?」

「そうだよー。だけど那月は嫌だって言うから仕方なくモデルデビューすることで手を打つって。」

「それはおかしい!」

「えっ?ツキナがデビューするの?ファンクラブ作らなきゃ。」

「ならうちの親にも言っておくか。」


拓馬と千夏もボクがデビューするみたいに言うがボクはやりたくないものはやりたくない。


といったはいいものの家に帰りお母さんに直談判したものの「卯月の友達がガッカリしてもいいの?」と言われればボクも嫌とは言えない。


(卯月が何か言われるのも嫌だし仕方ないか。)


かくしてボクはツキナのして撮影に出ることになった。

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