第24話

 バトルロイヤルの参加者の証である肩の幾何学模様を確認する為には姫崎がやったように強引に肩を捲るか、あるいはこのように着替え中に肩を確認するより他に方法はない。その内、自然なのは着替え中の確認だろう。




 ただ、通常の体育ではクラスメイトと合同体育を行っている隣のクラス、それも俺でならば男子生徒くらいしか確認のしようがない。しかし、この日この時ばかりは数々の生徒がこの更衣室を利用する。この日に限れば広い範囲で参加者の特定が可能になるのである。




 ちなみに女子生徒は麗佳に確認してもらっている。これで男子、女子のどちらのカバーも可能になるのだ。




 とは言え、この更衣室を使うのは基本リア充のみで、その他の生徒は確認できない。だが、実はこれも俺達に有利に働く。




 なにせ俺のような例外こそいるものの、このバトルロイヤルは基本的にリア充が強い。なにせ注目度こそが戦闘力に直結するのだ。それこそ「炎上」のような邪法にでも手を染めない限りは、スクールカーストでも下の連中が麗佳詩羽のようなリア充の中のリア充には敵わない。




 つまり言ってしまえばこの更衣室を使用しない者はマークする必要がない。例え参加者であったとしても対策する必要はないし、そもそも俺達が倒さずとも脱落するのは自明だ。




 と言うわけで俺と麗佳はそれぞれ更衣室に籠もりながら、着替え中の生徒達の肩を確認する作業に勤しんでいる。




『ザザ……ザザザザザ……らくん、円城瓦君、首尾はどうかしら』


 同更衣室で談笑しながら着替えている生徒三人の肩を確認していた最中、耳につけた通信機から麗佳の透き通るような美声が聞こえてきた。






「何十人か確認したが……見つからないな。そっちはどうだ?」




『私もまだね』




 通信機を通して麗佳と状況を確認しあう。


 この通信機は乃雪が用意してくれたもので、片耳につけても傍目にはそれと判断できないほど小型のもので、手で覆い隠せるマイクを通して通話が可能な代物だった。




 スマホでも問題ないと思ったが、この方が不審に思われないからと乃雪が用意してくれていた。まったく……めちゃくちゃ生活力がない事と他人とまったくコミュニケーションが取れない事、ネットで変なところに首突っ込んで工作活動しては無意味に炎上しかけて警察沙汰になりかける事を除けば、本当に有能な妹だ。有能さと無能さのバランスがピーキー過ぎない?




『それはそうと……』


 生徒三人が体操着から制服に着替え、更衣室から出ていくところを見送る中、麗佳の通信を聞く。




『これ、ずっと更衣室にいたらすっごく不審に思われない?』




「今更気づいたのか」


 最初から気づいた上で作戦に同意しているものだとばかり思っていた。天然か、こいつ……。

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