第121話 商工会議を設立しましょう!(11)

 レイルさんや兵士の方々の後ろ姿を見送った後に建物の中に入ろうとすると、子供が起きていて私の方を見ていた。

 

「どうかしたの?」


 私は近づいて、目線を一番年齢が低いエリンちゃんに合わせながら問いかける。

 すると、エリンちゃんが「リサのお姉ちゃんみたいになると思ったから……」と、涙声で話してきた。

 私はエリンちゃんの紫色の髪を撫でながらエリンちゃんが言った「リサちゃんのお姉さんみたいになると思ったから」と言う言葉を心の中で呟く。

 詳細は分からないけど……。


「大丈夫よ。私はどこにもいかないから」


 とりあえず、子供たちを落ち着かせることが先決。

 私の言葉を聞いて安心したのか、子供たちが私に抱き着いてきた。

 その日は、生活魔法【光玉】の魔法で室内を柔らかく照らしながら童話を聞かせ一人ずつ寝かせていった。



 

 ――翌日。


 子供たちより早く起きてレイルさんに教えられたとおりに薄味のスープを料理していると「お姉ちゃん!」と、金髪の8歳くらいの男の子ライロ君が、後ろから私に抱き着いてきた。

 薪を使って料理していたので、思わず後ろを振り返りながら「危ないでしょ!」と、注意すると瞳に涙を貯めていくと大きな声で鳴きはじめた。

 ライロ君の鳴き声に目を覚ました子供たちが次から次へと料理をしている場所へと押し寄せてくる。


「朝から騒がしいな……」


 そこには、鎧姿ではなく普段着と思われる麻の服を器用に着こなした赤髪の20代後半の男性が戸口に立って私と子供たちを見ていた。

 調理場は、10人達がライロくんから貰い泣きした子供たちが数人いて、事態についてこれない子供も含めて、とても混沌としていた。

 ちなみに目の前の男性は……。


「えっと、どなたですか?」

 

 私は首を傾げながら戸口にいた男性に話しかける。

 今は、お取込み中で忙しいから要件は後にしてくれると助かるんだけど?


「――俺だよ! 俺!」

「オレオレ詐欺ですか? なら必要ありませんので出ていってもらえますか? 私は今、とっても! 忙しいのです!」


 私は勝手に家に入ってきた赤髪の男性の背中を押しながら家の中から追い出そうとすると「お、おい! 待て! 俺だよ! 俺!」と、馴れ馴れしく話しかけてくる。

 俺と言う人の名前には心あたりはありませんと背中を押していると「おねえちゃん! その人、レイルさんだよ!」と、リサちゃんが私のスカートの裾を持って話しかけてくる。


「え……?」

 

 私は、顔を上げながら男性を見上げる。

 するといつも兜をつけているから分からなかったけど、顔は何となくレイルさんに似ていなくもない。

 西洋人風な顔って誰も同じように見えてしまうから、分かりにくいんですね。

 でもたしかにレイルさんぽい気が……。

 背中を押していた手を少しだけ弱めると、赤髪の男性ではなくレイルさんがホッと一息ついてくと「ようやく気がついてくれたか」と、ため息をつきながら私の方を見下ろしてくる。

 

「はあ?」


 私は、首を傾げながらこんな朝早い時間――まだ日が昇ってそんなに時間がなっていないのに、レイルさんが家に来ている事に驚いた。

 そんな私に、レイルさんは手紙を一枚、ズボンのポケットから取り出すと私に向かって差し出してきた。

 私は手紙を受け取ると、手紙を裏返し差出人の名前を確認する。

 手紙の差出人の名前は、ミューラー・ジェネレートと言う名前。

 聞いた事がない名前……。


「レイルさん、この手紙は一体何なんですか?」

「読めば分かる」


 私の問いかけにレイルさんは、それだけ答えてくると「弟や妹がいるから俺が子供たち

を見ておいてやるから」と、言うと子供たち……泣いていたライロ君に近づくと「男なんだから泣いたらダメだぞ。弱い男は嫌われるぞ」と、言っている。

 すると、ライロ君がレイルさんを見た後に、私を見ると小さく何度も頷きながら目を擦ると泣き止んでいた。

 私は、その光景を見ながら少しだけイラッときた。

 でも、今は手紙を読むことの方先決。


 手紙が入った封書を開けて、中の折りたたまれた手紙を取り出す。

 そして折りたたまれた手紙を開けて中に目を通していく。

 そこに書かれたらのは、私宛ではなくて――。


 リエナ様へ

 

 家賃の滞納があった為に、お約束通り今月中には出て行って頂きます。

              

                    ミューラー・ジェネレート

 

 

 私は手紙内容を見て、驚いた。

 今月中って……あと2日しかないから!

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