第85話 夕日の中でまったりと
食事を終えた私は、エイリカ村の子供たちに連れられて流れ着いた浜辺に来ていた。
エイリカ村の村長であるフレーリさんは私の記憶を取り戻させようとしているみたい。
「お姉ちゃん! こっちこっち!」
子供たちが私に向かって手をふってくる。
私は、仕方無いなと思いながら近寄ると、子供たちは砂浜の中から貝を探しているみたい。
私は、子供たちが指さした場所へ視線を向ける。
視線の先には何も残っていない。
きっと何か落し物があったといしても、それはもう見つからないと思う。
それに、何故か知らないけどあまり記憶は取り戻したくない気もする。
「……はぁ」
私は溜息をつきながら近くに流れ着いている流木に腰を下ろす。
そして子供たちを見ながら、これからの事を考える。
私が流れ着いたのは、海洋国家ルグニカの衛星都市スメラギから南東の位置する漁村で現在は200人程度の小さな村だと村長のフレーリさんより話を窺った。
村の人口のうち4割が女性らしく男性の割合が高いらしい。
詳しい話を聞くと税収が高いからと言うらしいけど、詳しくは教えてくれなかった。
「これから、私はどうしたらいいんでしょうか?」
一応、私はリースノット王国の騎士爵の末娘と言う事もあり平民と同じ扱いだけど、貴族としての扱いもされる可能性があるという何とも微妙な立ち位置だ。
結婚をすれば、旦那様の格に応じた爵位になるという話だけど、騎士爵だと長女なら同じ騎士爵か運が良ければ準男爵、もしくは男爵に嫁ぐ事も可能かもしれないけど末っ子だとそれは限りなく難しいと思う。
どちらにしても今後、私は身の振り方を考えないといけない。
教会に赴いた際に、魔力量を測定する機械を利用したけど、その時にせめて、中級魔法師か初級魔法師くらいの魔力量があれば冒険者として生計を立てる事ができたのに……。
でも、ここでくよくよしても始まらない。
まずは、初級魔法師よりも魔力量が少ないけど生活魔法ならギリギリ使う事ができるし生活魔法を覚える事にしましょう!
私は、アレクのお母さんから借りてきた生活魔法を覚えるための魔法書を広げる。
生活魔法は初級魔法師よりも魔力量が少なくても魔法が使えるという便利なモノ。
詠唱もいらないらしく、頭の中で魔法陣を描くだけで魔法が使えると書いてある。
私にはとても都合の良い魔法だと思う。
「えっと……【水生成】と――!?」
膨大な水が大気中に作りだされると海に流れ込んでいった。
私は、その様子を見ながら首を傾げながら――。
「生活魔法ってすごい威力があるのかな?」
――と、呟いた。
【種火】の魔法は、本来は薪に火をつける程度のモノらしいけど1メートル近い炎の塊が出現した。
【水生成】の魔法は、コップ10杯分の水を作り出すのに、人一人が押し流されるほどの水圧が生み出される程の水が生成された。
【送風】の魔法は、洋服を乾かす程度の風を持続的に発生させるのに、海岸で私が座っていた長さ3メートル、直径50センチ程の流木と同じくらいの大きさの流木を上空へ10メートル近く吹き飛ばしていた。
「なんか、私の生活魔法は少しおかしいのかな?」
私は、そんな事を思いながら一人呟きつつ生活魔法が書かれている魔法書を閉じると立ちあがった後、スカートについていた砂をはたいて落とすと村に戻る事にした。
何かあったときの為に子供たちから距離を取って居た事も功を制したのか、子供たちが私の魔法について気がつく様子はなかった。
「そろそろ帰るわよ!」
私は、子供たちに近づいていき村へ帰る事を告げると子供たちは近づいてきた。
みんな海に入ったあとに海岸で遊んだからなのか泥だらけ。
これは、子供たちのお母さんは洗濯するのが大変かな? と少し気の毒に思ってしまう。
それと同時に私も子供を産んで育てる時には、同じ苦労を味わうかもと苦笑いしてしまった。
そして、いつもどおり何の進展もないまま私は子供たちと村に帰った。
明日もこんな風にのどかに暮らせればいいなと私は夕焼けをみながら思った。
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