第53話 私にここまで喧嘩を売ったおバカさんは初めてですよ!

「分かりました。それで、私には何を望んでいるのですか?」

 私は、ウラヌス卿を見ながら言葉を紡ぐ。

 そして、私が観念したのかと思ったウラヌス卿は語り始める。


「まずは、王太子妃として振る舞って頂く。あとはやる事は、今までと変わりはない。それとユウティーシア嬢、貴女が知り得る知識の全てを提供してもらいましょう」

 なるほど……。

 それは、笑えないですね。

 私は頷いた後に頭上を見上げる。


「わかりました。では、仕方ありませんね。そちらが、強硬手段をとって私に物事を強要してくるのですから……私が同じことをしても問題ないですよね?」

 後半の私の言葉にウラヌス卿の顔が強張る。

 頭上には、直径数キロメートルに及ぶ巨大な初級攻撃魔法のファイアーボールが形成されていく。

 通常なら1メートルもあればいい火の玉が、数千倍の大きさに膨れ上がっていき王城を貴族エリアを飲みこむほどの巨大な大きさの火の玉になる。


「ユウティーシア嬢……何を? 抵抗すればどうなるか説明したはずですが?」

 ウラヌス卿は、私に話を振ってくるけど、私は否定的な意味合いを込めて頭をふる。

 そして口を開く。


「はい。聞いていましたよ? ですから……私は、国を人質に取らせて頂きました」

 私はニコリと笑う。

 そして言葉を続ける。


「大丈夫です。誰かの言いなりになるくらいなら死んだ方がマシですから。その範囲が広がっただけに過ぎません。家族には、申し訳ありませんが……仕方ないですよね?」

 私の言葉にウラヌス卿の顔が真っ青になっていく

 その様子を見ながら……。

 言葉を紡ぐ。


「気にする必要はありません。人間は、国はいつか死に滅び数千年後には、それがあったことすら誰も気にしません。ですからここで終わらせても問題はないでしょう。もう、メンドクサイいし。皆一緒に死にましょう。私は、今、死んでも特に未練はありませんし」

 私はニコリと笑う。

 そんな私の表情を見てウラヌス卿は震える口を開く。


「く……狂っている……」

 それだけ告げてくる。

 はて? 彼は何を言っているのでしょうか?


「貴方達が、私に仕掛けてきたんですよ? 人質をとってきたんですよ? ですから、私はここにいる魔法師全員の家族、親戚、知りあい、仲間、妻や子供に至るまで全てを人質に取りました。


思わなかったのですか? 自分達がする事を、誰かがやり返すと言う事を。


それとも、私がここまでするとは考えなかったのですか?


それは、浅はかですね。

たしかに自分の命が大事だとか誰かの命が大事だとか思ったりしたりする人間的発想を持つなら貴方達の行動は正しかったでしょう。


でもですね。私は自分の命なんてゴミ屑程度の価値としか思っていませんから、自分を巻き込んだ魔法を発動させる事ができるんです」

 話している間に、魔力に機敏な貴族達が住まう屋敷に明かりがついていく。

 異常なほどの魔力の高まりに気がついたのでしょう。 

 しばらくすると次々と、屋敷から貴族が出てきて、私達を見た後に頭上を見ると固まった。

 頭上の魔法がどれだけ強大な魔力を含んでいるのか、直感で分かったのかもしれない。

 私は、それを見ながらウラヌスを卿を見ながら微笑む。

 

「さて、どうしますか? ウラヌス卿、貴方と国王が提示した人質は私の家族のようですが、私の提示する人質は、この国であるリースノット王国そのものです。どうしますか? どちらが強いカードを持っているか理解できますか?」

 私はウラヌス卿に降伏勧告を宣言する。

 

「くっ……は、はったり……を……「あ、そうですか?」……な!?」

 私は力を見せるために、初級攻撃魔法であるファイアーランスを頭上に作り出して打ち出す。

 それが、音速の壁を用意に突き破り衝撃波を発生させながらリースノット王国を囲っている遠方に見える山脈に向かっていく。

そして着弾、私の、ファイアーランスが山脈の一角を吹き飛ばした。

 巨大なキノコ雲が舞い上がり、爆風が遅れてリースノット王国に吹き付ける。

 

 私以外に、誰も動こうとはしない。

 そしてキノコ雲が消え山脈の一部が溶解した姿までは夜だからハッキリと見る事は出来ないが、いままでそこに存在していた巨大な質量が消しとんだインパクトは大きかったみたいで……貴族エリアはパニックに陥った。

 

 しかも私とウラヌス卿の話し合いを見ていた貴族や魔法師達なんて腰を抜かしている。

 私は彼らを見る。

 すると、彼らの目にあるのは恐怖、絶望、畏怖であった。

 

「ば……化け物……」

 ウラヌス卿が、私をそう断じてきた。

 そう、私は……。


「どうですか? 理解できましたか? 誰に手を出そうとしていたのかを。さあ、取引をしましょうか? 王都が消滅してもいいなら、別に取引をしなくてもいいですけどね?」 




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