第25話 座敷童子さんが女子寮にいた!

 やってまいりました!

 私の城に!

 私は、私だけの女子寮に足を踏み入れる。

 すると、そこには無数の小さい何かが飛んでいた。


「ご主人様、おかえりなさいなのね」

 背中の羽根をパタパタ動かしながら私の傍まで来た何かは挨拶をしてきた。


「……えーと、どなた?」


「私達は家の妖精――」


「――座敷童子さんですね! わかります」

 私は、ハッキリと言い切る。

 ブラウ○ーなんて言わせませんよ?

 座敷童子さんでいいのです。


「違います。私達は……「座敷童子さんですよね?」……」

 ふむふむ。

 なんとなく分かりました。


「あの彼方達、座敷童子さん達は、一体どうしてここにいるんですか?」

 私の言葉に、座敷童子さん達は落胆した表情を見せる。


「実は、私達がこの建物にきてから、人がいなくなってしまったのです。毎日、私達の存在が強くなる夜に挨拶に伺っていたのですけど……皆さん、驚いてしまって、いなくなってしまったのです」

 ふむー。むずかしいですね……。


「えっと、そもそもどうして皆さんは夜にならないと見えないのにこんな昼間から姿が見えるんですか?」

 とっても不思議です。

 私の言葉に、座敷童子さん達が戸惑いの表情を見せてくる。


「私達は、人がいないと力を失ってしまうのです。でも、昨日からすごい力を感じて一気に力がこうパーッと湧きあがってくる感じで実体化できたんです」

 あー。なるほど、私が魔法を使ったからですね。

 

「えっとそれで、どうなるんですか?」

 私はこれからどうしたらいいか迷ってしまう。

 そう言えば座敷童子さん達は、たしか家の繁栄とか掃除とかそういうのが得意な気が……。


「そうですね、ハウスキーパーみたいな事などができます」

 私は座敷童子さんの言葉に頷きながら考える。


「それではお掃除などをお任せできますか?」

 この女子寮は広い。

 掃除をしたのは私の部屋と大浴場と台所だけで大半は汚れたまま……あれ?

 よく見ると、階段も窓も廊下も壁も綺麗になっている?


「もしかして……もう?」


「はい! 私達はそれが存在意義ですから! ですから代わりに魔力を分けてほしいです!」

 魔力を分けてほしいと言われても……。

 生命力を魔力に変換してみる。

 すると30匹近い座敷童子さん達が近づいてきて周囲を飛び回る。

 

「「「「「とても上質の魔力です! おいしいです!」」」」」

 そうなんだね……。

 あまり気にしたことないけど、おいしいんだね。

 そういえば、妖精って御菓子とかが好物って聞いたことがある。

 

「少し御出掛してくるから、お掃除お願い」

 私の言葉に「はーい」と、座敷童子さん達が手を上げて女子寮に散っていく。

 その様子を見ながら私は、貴族学院の学院長室下の購買部に向かうために女子寮から出る。


 購買部に到着すると、何人かの生徒達が商品を見ていた。

 その人たちの服装は少し違っている学服だった。

 購買部には置いてなかったような……。


「あの……少しいいですか?」

 私が購買部に入って他の生徒の様子を見ていると横から声をかけられた。

 声をかけられた方は目を向けると、そこには同学年の女性が立っていた。


「はい? どうかしましたか?」

 私はどうして声をかけられたか分からない。

 でも、私に話しかけてくると言う事は同じクラスメイトの方ではないんでしょう。


「あ、あの……あの……」

 ふむふむ。きちんとサックリと言ってほしいけど、どうしましょうか?


「実は、今年から貴族以外が学院に入れるようになってテストで合格して入学したんですけど、実家から遠いのでどこか安いお金で借りられる場所が無いか購買部の人に聞いていたんです。でも知らないって言われて……」

それは大変ですね。


「でも同学年の赤いリボンをつけている方がいらっしゃったので! どこか安くお部屋を借りられる場所がないかなって思ったんです」

 なるほど……それは……でも、何故に私にそんな話を振ってくるんでしょうか?

 私とか貴族の中でも最上位にあたる公爵家令嬢なんですけど?


「あ、私。ユーメと言います。ハデス公爵領の村イーネで暮らしていて今日から入学したんですけど、右も左も分からなくて困っていて。でも、良かったです。同じ貴族ではない方がいらっしゃって……」


「あ、はい……」

 おかしいですね。

 貴族の作法とかそういったものは一通り学んだはずなのに。

 さすが、前世の記憶をもつ一般市民の代表者である私はその滲みでる庶民オーラが隠しきれなかったようですね。

 

まぁ……。彼女が一般市民の方なら貴重な情報を得られるかもしれません。


「今、私が宿泊しております女子寮があるのですけど、そこならかなり前に廃棄されていましたので無料で泊まれると思いますよ?」

 私の提案に、ユーメさんが目を輝かせた。


「ほ、本当ですか?」

 私の肩を掴んでくるユーメさんに私は頷く。

 あまり力を入れないでほしい、肩が痛いです。


「あとで案内いたしますからお待ち頂けますか?」

 私の言葉に、ユーメさんは頷くと購買部の端に歩いていく。

 よく見ると大きなトランクケースが2つ置いてある。

 ふむ。これは着の身着のまま来たという感じでしょうか?


「すいません」

 私は今朝、話しかけた購買部の方に話しかける。

 すると今朝の事を覚えておいてくれたのか。


「はい、どうかしましたか? 今朝、注文していただきました布団やベッドに関しましては在庫がかなりありましたので夕方には届くと思いますよ?」

 店員さんの言葉に私は頷きながら


「そしたら、同じのを1個追加で発注して頂けますか? 夕方には届けられますか?」

 私の質問に購買部の方はニコリと微笑むと。


「はい、大丈夫です。請求は同じでいいですか?」

 購買部の方に私は頷く。全てウラヌス公爵家払いでお願いするように伝えると、私はユーメさんの元へ歩いていく。


「それでは。ユーメさん、女子寮に向かいましょう」


「はい」

 返事をしてくれたユーメさんを連れて購買部を出た。

 さて、女子寮についたら座敷童子さん達を紹介しないとダメですね



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