第113話

 さすがに、これ以上はベンウでは持ちきれないだろう。 

 あまり持たせてもあれだしな。

 

「それにしてもユウマって珍しい色の髪と瞳の色をしているよね?」

「そうか?」


 シリカが俺の髪を見ながら疑問を呈してくる。

 まぁ、たしかにと思ってしまう。

 生まれて15年間経っているが、俺のような黒髪黒目の人間を一度も見たことないからな。

 ただ、まぁ……金髪碧眼はわかる、

 だが赤や青と言った髪色を持つ奴がいるからな。

 俺は、そいつらを見た時、こいつらの遺伝子どうなっているんだ?と何度も心の中で突っ込みを入れていた。

 

「うん、まるで聖書に書かれている大陸に最初にきた聖女様と同じだなって思ったの」


 聖女ねぇ……たしか、ウラヌス十字軍を派遣した奴も聖女と言っていたな。

 何か繋がりがあるんだろうか?

 まぁ深く考えても仕方ないな。


「それで、何かあるのか?」

「ううん、少し気になっただけなの」


 シリカの話を聞きながら俺は、借りた弓を引き絞りながら矢に【空気抵抗軽減】【加速】と【螺旋】の3つの魔法を発動し付与し矢を放つ。

 放たれた矢は一直線にイノシシの脳天を貫き一撃で仕留めた。


「こんな木の鏃でイノシシの脳天貫くとかユウマはすげーな! それと、これまで一緒に持って帰れないぞ?」

「イノシシは俺が持っていくから帰ろう」


 俺の言葉に、「そうだね、森の中で暗くなったら危険だし帰りましょう」と、アモラさんが同意してきた。


 そして日が暮れるまでには村に戻ることができた。

 仕留めた獲物はほとんどが小ぶりな物だったが、パーティメンバーは大猟と喜んでいたのだから良しとしよう。

 村に踏み入れると収穫はすでに終わっており、あれほど実っていた麦穂は全て刈り取られていた。

 俺たちが戻ってきた事に気がついたエルスが近づいてきた。


「ユウマ! そっちの収穫はどうなって……すごっ!?」

 

 エルスは、俺達が狩猟してきた獲物を見て驚いている。

 

「俺の実力だな!」

「あなたは何もしてないでしょ!」


 ベンウの言葉にシリカが突っ込みを入れている。

 俺は二人の言葉を聞きながらカークスの方へ視線を向ける。

 先ほどからずっと俺に視線を向けて来ているという事は用事があるのだろう。

 俺はカークスに近づく。


「俺に何かようですか?」

「ユウマを借りていくぞ?」


 カークスはそれだけ言うと俺の手を取り歩き出した。

 なるほどな……これは、ちょっと困ったな。

しばらくカークスと歩いていると村の外れまでに着いた。

 ここまで来れば、カークスに直接文句を言っても問題はないだろう。


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